たまぼっちと終わらない旅-1
「ようやく……ようやく全シリーズのぼちぼっちが入手出来た!本当に……本当に長かった!!」
馬車の中で大橋が叫ぶ。ちなみにたまぼっちは1人用の携帯ゲームであり、友達を増やすことでぼっちからぼちぼちになる事を目的とする。このシリーズに共通するのは配合を繰り返すことでぼちぼっちというたまぼっちを手に入れると新しいたまぼっちがいくつか追加されるようになるらしい。
ただ、たまぼっちは本家で10作品出ている程の長期シリーズらしい。簡単に言うと小学生が最新シリーズをしていると、母親は小学生時代に初代をやっていた世代という感じだ。
「特に初代と10の通信が必要な事に苦労したよ……まぁ、これを考えた人は反響があるか無いか微妙だったけど……。」
「どんなシステムだよそれは……」
「親子でたまぼっちを楽しむってのがコンセプトらしくて、初代の頃にタイムカプセルというサービスでデータボックスっていうメモリを会社に送ると特別なぬいぐるみが貰えるって企画があって……そのデータが10の発売の頃に1+っていう機体で送られてくるのよ。それと10の割引券がね。で、1+を通じて親子で楽しむたまぼっちってコンセプトらしいのよ……。」
……これ、独身だったり子供いなかったり、そもそも子供が男の子だったらって事を全く想定していない企画だな……と感じてしまう。だが親子で楽しめる環境を作るために会社を存続し続けた会社は凄いと思うがな……。
「で、ここで面倒なのが10は必ず1か1+と通信しないとぼちぼっちが手に入らない仕様なのよね……。これのせいで2からのプレイヤー達は1+を買うのに必死になったらしいわ。転売屋まで出てくる始末だし……。」
「……そうなのか。」
「でも私は6で一回ぼちぼっちを出してその後の辛さを知っているからセーブしてまだ暇つぶしレベルで楽しめたけど……。」
「クリア後が鬼畜なゲームなのかよ……。」
「まぁ、ぼちぼっち後は大体大人のゲームと化すからこのゲーム。子供アニメや4コマになってるのが信じられないほど鬼畜になるの。」
そう言いながら充実感に満ちあふれた大橋を見て、私は非常に残念な言葉を告げた。喜びの舞を上半身だけでやっていた大橋はその事を聞くと急に青ざめてから泡を吹いて倒れてしまった。それを心配したアルが必死に介抱して10分程で正気を取り戻していた。
「……このガチャって未来の作品でもでるからな……。」
私がそう言いながらガチャをやってみるとタイムリーな感じでたまぼっち11や12が当たった。さらに引いてみると58や64等、どれだけ続いているんだと思える程のシリーズが出てきた為、大橋はガクッと項垂れた後、やけくそで11を始めたのだった。