番外編 この星の大きさについての考察-3
天文台を完成させた彼等は月に似た惑星をそのまま月として観察する事に専念した。現在到達していない惑星も高度な天文台を使用する事でより性質が分かりやすくなるからだ。これは現代技術の応用だけでは無く、ファンタジーな要素とも言える『鑑定』の恩恵も受けていた事も関係している。
結果的に宇宙に関して分かった事がある。これは前世の世界の宇宙と殆ど同じ物である事だ。ただ、月に関しては大きさや形に関しては流石に違っていた。実際餅つきウサギや美女の横顔に見えるという地球の衛星の月とは違い、こちらの世界は巨人の手の様に見えるのだ。
また、月の砂の性質も著しく違う。……というのもこの世界の月は砂が存在しない。ならば代わりに何があるのかと言えば……氷だ。それも各々融点の違う氷であり摩擦熱で著しく溶けてしまう氷もあればマグマをぶつけても溶けない氷もある。
「………茶色の氷ってなんとも言えない感じだな……。ただ、これをどうにかしないと着地は難しいだろう……というかそれ以前に寒さに耐えられる様な作りにしないとマズい事も判明しているからな……。」
「恐らくこの月が特殊な軌道で動いているから、太陽に当たらない。それでこんな感じになっているんだろうな……。つーか、下手すると無月区域と呼ばれる月が一切見れない場所も出てくるってどういう事だよ……。」
この星はとてつもなく大きいがその根幹は恐らく月に頼らずとも安定して回転している事なのだろう。実際この星の衛星である月は球の中心を縦回転かつ横方向に大幅にズレた軌道を取っている。その為日に当たることが無く凍っているのが現状なのだ。
それに伴い、この世界の月は地球で言う月の様に太陽光を反射して光っているように見えるのでは無く、氷による発光で視認できているのである。……まぁ、それだけ氷の輝きが強い事もあるのだが………。
「……まぁ、天文台を作ってなかったら凍死していただろうな……。いや、太陽フレア等の影響が少なそうなのが頼みの綱か……。」
「それ以前にエネルギー不足にならないように効率の良いエネルギー変換器を用意しないと……。」
ただ、課題が明確化した事は天文台を作った大きな利点だった。ただ、研究大好きな天文学者達が関係ない場所にまで手を伸ばしたので急遽もう一つ天文台を作ることになるのだが……これはまた別の話だ。また違う機会に話すこととしよう。
「……いや、まぁそのまま結婚したよな……あの2人は。前世で独身同士だったから一気に結婚まで行ったんだろうが……ここは別に婚活パーティーの会場では無いんだがな……。」
そんな事を言う初代メンバー達は、前世の伴侶の事を思い出しながら涙をホロリと流すのであった。