番外編 初代夜紗書編集長の転生-3
さて、ラウンとセレスが刻印をあれこれしている間に、ラウンの発行している新聞に関しての話をしておこうと思う。
〖黒丸新聞〗はラウンが18歳になった時から発行し始めた物で、最初は国家機密の暴露等ではなく災害やモンスターの状況、人気のスイーツ店や宿屋、温泉等の情報が多かった。しかし国家機密となる戦争の準備や予言者への取材で分かった国境に跨がる程の巨大な魔物の出現等を記事にした結果、隣国同士争うことも無く予言通りに出現した魔物の討伐に成功した事から、この黒丸新聞は国民達にとって必要な物だと認識されたのだ。まぁ、主に戦争に対しての抑止力なのだが……。
ただ、そこから黒丸新聞の進化は凄まじかった。というのも最初は20部程しか売れなかった物が一気に億に届きそうな程の契約が取れたのである。そしてラウンの取材範囲も広がっていき、生活にあった方が便利となっていた。
最初の一面には国家間で話題のニュースがデカデカと書かれている。しかし考察などは書かれておらず事実のみが書かれている事が高評価を貰える一因ともなっていた。……というのも新聞がこの黒丸新聞紙か存在しない為、考察を書くとその考えだけが世間に響き渡るからというラウンの判断でもあった。
その結果、考察は彼では無い別の者達がそれぞれ討論する様な形となった。まぁ、その関係で商業やモンスター関連の技術が少しずつではあるが上昇していったのである。
その後、黒丸新聞は各冒険者ギルドの常備依頼や求人情報、道場や工房等での人員募集や研究会等の募集等も載るようになり、広告料としてのマージンがラウンの元に来るようにしていたのである。
また、この黒丸新聞での指名手配や迷惑者の報道も関係しているのか治安が良くなっていき、求人情報から来た貧民達もいなくなった為スラムも少しずつ少なくなっていった。その為、黒丸新聞の進化と供に国も徐々に繁栄し始めているのだ。
ただ、集まってくる情報をまとめて記事にするという作業しかしていないラウンはかなり退屈していた。その為彼は自分と同じ存在……前世で生きていた世界からの転生者を探す為に連載小説を始めていた。
名前はこの世界らしく変えているが、書かれている内容は完全に日本の名作だった。これは現在黒丸新聞の人気の一つにもなっており感想も少しずつではあるがラウンにも届き始めていた。ただ、あまりにも量が多すぎるため、全てを見る事は出来ていなかった為、彼は気付いていない。
高く高く積み上げられた感想の束の中に自分と同じ世界から転生してきた者達からのメッセージがある事に……。まぁ、その内気付くだろうが。