番外編 初代夜紗書編集長の転生-1
「黒丸新聞ー。黒丸新聞でございます~。」
「おっ、新聞か……。隣の国の情勢も分かるからかなり便利だねぇ。ただ、金が掛かるってのは痛いけどな。」
「週1回ペースで1年1000G契約なので色々と大変なんですよ~。集金の時に払わなかったら新聞に名前が載りますからね。」
「分かってるよ。だが、翼のある者は便利だよなぁ。こうして山奥にも来てくれるんだから。」
山奥に佇む小屋で新聞を受け渡した鴉の翼を背中に持つ少女は、自分の産まれた卵を産んだ親の元へと戻っていく。彼女のノルマは山奥ばかりの為比較的早く戻れるのである。
「おかえり。今日のおやつも用意してあるから早速食べると良いよ。」
「ありがとうございます!主様!」
彼女が主と言った者こそ、彼女の産まれる卵を産んだ者であり、前世で夜紗書初代編集長をしていた雲上 琢磨である。もっとも現在はアンティークレイブン……蟻鴉人という種族で転生しているのだが。
「やっぱりこの体は便利だよなぁ……。私の頼み事は何でも聞いてくれるからネタも集まりやすいし空は飛べるから移動にもあまり困らないし。……ただ、カメラが手に入らないのが痛いんだよなぁ……。」
彼はそう言いながら横向きに寝っ転がってだらーんとしていた。背中から鴉の翼が突き出ている為、畳んでいたとしても仰向きではだらける前に激痛が走るのである。それはもう、背骨の骨がボキボキと折れるほどの激痛が。
「……まぁ、新聞に関しては好評だから良かったけど……この種族になったのってあのキャラが好きだったからなんだろうか?いや、気にしない方が良いんだろうけどさ……。」
彼は生前、友人にやらせてもらった某シューティングゲームで某烏天狗が好きだったのだが、これは今回の転生とは全く関係が無く、偶然なのだ。まぁ、蟻鴉人は明らかに異色な種族なのだけど。
まず、蟻鴉人の蟻は姿形では無く性質の関係で付けられている。……まず蟻鴉人は15歳になると卵を産める様になる。まぁ、1年に1度、100個までなのだけど。……しかし一気に最大数産もうとするのは死に最も近い事と親から聞かされていた為、彼は毎回10個までしか産んでいない。
ただ、誰もがこの性質を持っているため、蟻鴉人には結婚の概念があまり無い。そもそも結婚しようにも親が同じだったと言う事例が出てくる事も少なくないのだから。だが、彼はそれでも結婚したいと言ってくる相手がおり非常に面倒だと感じているのもまた事実なのであった。