リューケ共和国からの旅立ち-1
セバスと暫く話した後、私は通信を切る。本当ならこちらにこないか?と言いたいがそうなるとセバス以外の者達も呼び寄せなければならなくなる。実際楝蛇木の者達も半ば無理矢理3人で来たのだしね……。
「まぁ、そろそろこの国からバレーシア農帝国へと戻らないとね……。それからまた旅に出ないといけない訳だし。」
「そうですか……。出来ればまたギャンブルをしたかったのですが……無理に引き留める訳にもいかないからね……。」
マルフはそう言いながら私に餞別として『人生ゲーム』と『9ルーレット』を渡してくる。それを私は複雑な気持ちで受け取るのだった。まぁ、人生ゲームにはかなりの種類があるので楽しめそうではあるのだけどね……。
「じゃあそろそろ行くぞ、レルミー、カグヤ、大橋。」
「分かりました!!」
「じゃあ、睦月……またね。」
大橋も睦月との別れを済ませて私が取り出した馬車に乗り込んだ。もう少し大げさになるのかと思っていたのだが、結構あっさりとした別れ方なのだった。まぁ、異世界らしく全く交流できなくなるわけでは無いからな……。
「……まぁ、このまま何事も無く帰れれば良いんだが……と思った途端にこれかよ。」
あれからリューケ共和国の門まで行こうとすると、検問の様に貴族の私兵らしき者達が通行止めにしていた。そしてそこから現れたのが紫の髪をしたキザな男なのだった。
「君達!その馬車を置いていきたまえ!代わりにこの馬車をくれてやるからさ!ほら、ここでは中々手に入らないマジュラー馬の馬車だぞ!!凄いんだぞ!」
「……嫌だね。それ不良品じゃないか。」
キザ野郎が私の馬車と交換条件に出してきたマジュラー馬は珍しさというか観賞用に特化しており主に馬車のカタログやらのモデルとして使われる事が多い。しかし馬としては人を上に乗せて歩ける程の馬力も無いのだ。
「成る程……流石にそこまでバカでは無いか……。」
「そういう事だ。これ以上付き合うのも面倒だからもう通して貰うぞ……エゲリック・ドンドワール。」
「……まさか私の真名を知っているとはな。なら遠慮はしない。野郎共!あの馬車を奪うが良い!」
「……面倒だな……。」
正直街中で殺しをすると面倒だが常に中二病臭いと評判だった玩具メーカーの社長エゲリックの転生した人物とまともに対応するのも面倒くさい。そう思いながら私は『煉獄魔法』の威力を調整しながら私兵達を無力化していくのだった。
………まぁ、加減が出来ずに手首から下が焼け落ちた奴もいるけども仕方ないと思いたい。大煩悩に反応する様になっていたので私や他の者にセクハラ以上の事をしようとした奴等が手首より下を無くした者なので気にしないで良いかなぁとは思うのだけどね…。