リューケ共和国のグルメ-2
「……どうも、元イザナミ食品会社取締役社長の伊波 遙人だ。現在はオーカーという名前となっている。」
「……イザナミ食品の方でしたか。私は黒華鉄 剣城と言います。」
なんか久しぶりに男性の転生者を見たような気がする。まぁ、彼はそんな事は気にしないだろうが、かなり強面の為に何かしらこちらに言いたいことがありそうだと感じるのだった。
「……真城殿の死は非常に残念な事だったが、それ以上に黒華鉄家の没落……というよりはお家乗っ取りは残念だった。」
「…確かに、美華家に変わってからは取引は無くなりましたからね……。安くて素材の良いというイザナミ食品の全てを否定するような感覚でしたからね、あの糞女とその子供達は。」
実際スーパーで買うという事が多かったが年に1回…多くて2回程のペースでやるパーティーにはそれなりの量の食材が必要になる。その時にイザナミ食品から材料を仕入れていたわけだ。ただ、その後何回か近所のスーパーで買えない物を取り寄せたりするという感じで付き合いはあったのである。
「……確かにな。イザナミ食品の一員としてあの言葉を聞いた時は本気で殴りたくなった。」
「……安く売る物は質が悪いと決まっている……か。イザナミ食品は質の良い物を安く売るという信条である事すら糞女は知らなかったんだよな……。だが、高い物=質が良い訳でも無いんだが。」
実際値段が高くなる原因は質の善し悪しだけでは無い。開発やらに掛かった費用やら需要と供給の関係もある。ただ開設後僅か数年で倒産した奈留食品という会社の様にわざと質の悪い物の値段を高くして糞女の様な人間を釣り上げる事もあった。
まぁ、あの会社はデザインやらアイディアに関して特化した感じで有り、騙されて買ってしまう事も多いという感じだった。まぁ、それでも倒産する前に商品の販売権利をどこかが買い取って欲しかったという様な商品もあったのだけど。
「……しかし美華家のパーティーでは高級食材をふんだんに使った割には美味いと感じなかったな……。あれなら私の娘の手料理の方が美味かった。」
「……それに関しては仕方ないと思うがな。多分あの料理を作ったのは糞女か新人の料理人達だろうから。黒華鉄時代の料理人はその時は完全にストライキを貫いていたからな……。」
それに関して話していたら黒華鉄家にいた頃の使用人達にまた会いたくなってしまった。ただこちらの事情で連れてくるとかなりややこしそうな事になると思うので私はオーカーと話をする事で気を紛らわせたのだった。
「……まぁ、結局料理は素材の質も大事だが料理人の腕もまた大事って事なんだよなぁ……。糞女は高級食材をドバドバ使うだけの料理だったらしいし。」
私がそう言うとオーカーとマルフはうんうんと頷いていた。まぁ、高級食材をどぶに捨てるような料理をする糞女の話を聞いてそんな料理はしたくないされたくないと感じたのだろうと思う。……まぁ、私も一口だけ喰わされた事があるが……高級なオリーブオイルの味しかしないフルコースには呆れるしか無かった記憶があるのだった。