ラグバレー聖国との付き合い方-3
肉じゃがとナンという異様な組み合わせの物だったが、材料だけ聞くと肉じゃがと言えるのか?という感じだった。いや、美味かったんだけどね………料理人の腕が凄く良いのだろうからこそなのだろうけど。
まず、馬鈴薯は私達の国から輸入した物なのは間違いないし、肉じゃがの元となる砂糖はアッシルベン魔帝国から輸入した物だろう。ただ、ここで使われているのは普通の醤油では無く魚醤なのだ。それに今日は酒が駄目な日の為に酒も入っていない。……なのにここまでの味を出せるのは魚醤の活躍なのだろう。
「………本来ならこのニクジャンガという料理はみりんという酒を使用するのですが、生憎今日は使えないので……代わりに家のシェフがボルコールという魚から作った特製の魚醤を使用しております。彼女はラグバレー教には所属していませんが、私達に送る料理は全て教典の内容を意識してくれているのです。」
「そうなのか。ボルコールという魚は随分優秀そうだな。」
「はい、何でもシェフによれば醤油とみりんのハイブリッドと言っておりました。もっとも、ボルコール自体獲れる時期が限られておりますから滅多に使わないのですけどね。」
実際ボルコールという魚は雪が降り始める頃にしか現れないらしい。それに出現する区域の殆どは現バレーシア農帝国の領海となっており貴重な魚となっているらしい。しかし、私達の国に所属しているヘレンとレルミーはボルコールという魚の存在自体を知らなかった。多分ロジャー・アルドが魚の価値を知らずにただ領海だからと漁をさせず、自分達もしなかったのでは?と思える。
「ここまで良い物が獲れるならば私達の国の領海で漁をするのを許可しますか……。元々軍帝国時代には造船はしていたものの、漁をしないという勿体ない事をしておりましたから。ただ、海域の調査をしてから対応して貰いたい。ただ獲るだけでは逆に獲れる量が減るかも知れないからな。」
「それはありがたいことですな。ただ、無償でという訳では無いのであろう?」
「そうですね。簡単に言えば魚とそちらの特産品を交換するという形にして貰いたい。こちらには漁をする技術は求めていないが、その魚醤の様な物はこちらの国でも普及しておきたいのだ。」
実際肉じゃがの他にも醤油と馬鈴薯があれば色々出来るのだ。まぁ、醤油が魚醤な為味噌もとい大豆が存在しているかが問題なのだけど。その辺りは気にせずにいこうと思いながら私は交渉を始めるのだった。まぁ、ちゃんとナンは皿に置いたけどね…。