アッシルベン魔帝国からの帰還-1
厨房でバレーシア農帝国に連れていく料理人のレンを連れて出る際、料理長から砂糖と塩を6㎏ずつ退職金代わりとして渡されていた。まぁ、今日の内にアッシルベン魔帝国から出て行く予定だからな……というのもガチャでアイテムBOXとなる新たなアイテムを引き当てていたから可能になっていたのである。
「とりあえず持って行くべき物は全てこのバッグに入れてくれ。この国からサッサと出て残りの2つの国とも交渉に行かないといけないしな……。」
「分かりました。……しかしアイテムBOXはアッシルベン魔帝国製の物よりも優れていますね……。私達の作る物はかなり持ちにくいんですよ……。」
まぁ、持ち手の無いサラサラとした革袋よりも部活等でよく使う様な肩に掛けられるエナメルバッグの方が使い勝手が良いのは明らかだと思える。まぁ、王女であるシェドンが蛍光ピンクに緑のロゴマークの入った物を使うのはなんとも違和感があるのだけどね……。
「レンの方はあまり荷物が無かったから普通に詰められたのか?」
「そうですね。まぁ、自分の愛用している包丁や休みの日に使っていた普段着等とかですからね……。後パンツなどの下着等を入れていますから問題は無いです。」
「本来なら他に必要な物もあるだろうがな……。まぁ、最悪バレーシア農帝国で調達すれば良いか。それで暫くは持つだろうし。」
まぁ、衣服に関してバレーシア農帝国では奇天烈な方法で作成している。…というのもこの世界では野菜と呼ばれる物で食用に適さない物の蔓やら葉から繊維を取りだして糸にする事が多いのである。普通は紙になる筈が何故か糸になるのだ。それも馬鈴薯の蔓は絹レベルの物となる。
……まぁ、そうでも無ければあれだけ使われていないというか毒が発生するまで放置してはそれに関して文句を言うほど使い道が不明なままだった馬鈴薯を育てるよなぁと思うのだった。まぁ、それについてはまた別の機会に話すこととしよう。
「準備が出来たならサッサと馬車に乗り込んでくれ。」
「分かりました。」
「……しかし、良かったんですか?料理長クラスの者を……いえ何でもありません。聞いたら姉様が血涙を流しそうですし……」
流石にそこまでショックは受けそうに無いが……馬車に乗り込む際、レンはシェドンをエスコートする様な形で乗り込み、2人で恋人繋ぎと呼ばれる形で手を繋ぎながら座っていた。それを見てレルミーは衝撃を受け、ヘレンはキュンキュンと擬音が出てきそうな感じで2人を見つめていた。
「なんか、駆け落ちする恋人の前に偶然現れた電車やバスの気持ちになるな……。」
しかし後ろの4人に私の呟きは聞こえなかったらしい。まぁ、聞こえていても何も問題は無かったのだけどね……。そう思いながら私は馬車を走らせるのだった。