アッシルベン魔帝国との取引-4
抑止力となる人材も確保したが、面倒な事になる前に不戦条約を結ぶ手続きに入る。まぁ、本来なら私達が不利になる事が普通となるのだが、先程洗脳しようとしてきた事でシェドンがこちら側に来る事が決定している為、アッシルベン魔帝国側はあまりにも不当な条約は交わせない状態になっていた。
「……じゃあこちらからは馬鈴薯などの農作物をそちらに輸出する。後管理の辛い魔道具があるから管理を任せるよ。」
「……分かった。だが、アッシルベン魔帝国だけと不戦条約を交わしても何の意味も無いぞ?」
「他の国にもサッサと行くから大丈夫なんだな、これが。まぁ、殺そうとしてきたら反撃すると言って置いてくれれば何の問題も無い。」
「……苦しいが、それで受け入れよう。だからそれを私に向けるのは止めてくれ……。」
グレムリンはそう言いながら条約に関しての書類を書き上げる。そしてその書類を箱の中に入れ、ベルを鳴らした。すると執事と兵士がやってきたのでグレムリンは執事に箱を渡した後、兵士にある事を耳打ちしたのだった。
「……何名か勝手に敵国に攻め入る将軍がおるからの……。こうしておかんと条約を破ったとして何を取られるか……。」
「そうだね……そちらの法律を色々といじらせてもらう感じになるかな。本来ならこの国で色々と指導したいところだけど多分自覚してないだろうし。」
『アッシルベン型糖尿病』に掛かっている事を知っている奴がこの国でどれくらいいるのか?という事だ。糖分は確かに必要だが明らかに過剰摂取している国民が多いわけだし。ただ、オルトビとシェドン以外は完全に困惑していたので私は話題を変えた。
「……あぁ、とりあえず管理してもらう魔道具を出しておこう……『妖刀アダム・クレーゲル』という刀なのだが……。」
「それを私達に管理しろと?」
「まぁ、そこの双子に任せておけば問題ないだろう?」
「「確かに、面白そうだね。」」
「ならこの刀は悪用しないよう使ってくれ。私には上手く扱えんからな……。」
『妖刀アダム・クレーゲル』は女性専用の妖刀であり、ロジャー・アルドの妻兼幼馴染の持っていた刀である。ただロジャー・アルドの使っていた対となる存在、『妖剣イヴ・クレーゲル』が消滅した為、現在はチラ見だと大量の魔力を溜め込んでいるだけの刀であるので正直使い処が無いのである。いや、一応はあるのだがそちらに管理された方が刀にとっては幸せだろう……。
「あぁ、後こちらは砂糖を輸入しておきたいな。国の方でもたまには必要になるわけだし。」
芋系を結構収穫しているというのが元ハンバルシア軍帝国…現バレーシア農帝国の特徴の為、当然蒟蒻芋もあるし肉は魔物を狩れば良い。醤油やみりんに関してはこれからどうにかしなければいけないが肉じゃがの材料にはなるだろうと考えながら私は条約の中に砂糖に関してもねじ込むことに成功したのだった。




