アッシルベン魔帝国との取引-1
「……成る程、『ハンバルシア軍帝国』という国は滅んだわけですか。いい気味ですよ。マーケンもそう思うでしょう?正直貴方が『ハンバルシア軍帝国』から婿を取ると言った時には憤慨しかけましたが中々良い婿を取ってきましたからね……。」
「えぇ、私もシアンの毛嫌いする故郷が滅んだのはとても嬉しいですわ。これでシアンが早く戻ってきてくれると嬉しいのですけど……。」
名前は分からないがどうやらハンバルシア軍帝国の王ロジャー・アルドの第2王妃であるBはオトレームの慕っていたグレムリンの妹だったらしい。まぁ、既に病没している事は知っている……いや、知っていたからこそこうして笑っているのだろう。少なくともBを奪って行ったロジャー・アルドは死んでいるのだから。
「しかし、なぜハンバルシア軍帝国の王女だけが生き残る事になったのでしょう?それにレルミーは行方不明となっていたのでしょう?」
「いえ、私は謀反の罰として閉じ込められていました。貴方達アッシルベン魔帝国の王族が何度も交渉し手中に収めようとした『魔人契約の書』を利用してね。」
結果は失敗に終わっているものの、彼女が吸血鬼から『霧化』のスキルを得た事は間違っていない。それを聞いた王族達は本当に儀式を行ったのか?とレルミーを見た。
「えぇ、私は純潔乙女としての力を最大限に使い霧の体を手に入れました。結局は父様に気配を察知されてしまいましたがね…。」
「成る程……しかし素材ならこちらにも豊富だ。それを早く私に見せては貰えないだろうか?」
そう言われてレルミーが私にウエストポーチから『魔人契約の書』を出してと促して来るが、私はそれを出さずに座らされたテーブルを『鑑定』する。するとペインの座っている席の下に何に使うのかが大体予想できるアイテムがいくつか入っていたのを確認する。
「……まぁ、散々虐げられてきたハンバルシア軍帝国に恨みを持ってこんな事をするのは問題ないが……せめてバレバレな方法は取らないで欲しかったよ。似たような事を考えていた奴が伝えてきたのだろうけどさ。」
「……何が言いたいんだ?」
「恐らくハンバルシア軍帝国がこちらに返しに来た時とか、それを持って来たときにやろうとしたんだろ?相手を洗脳する行為を。……その為にペインのテーブルの下に『洗脳魔法』の儀式用のアイテムを下に置いておいた訳か。」
すると国王であるグレムリンが驚いていた。いや、その目はどう見ても「よく見破ったな」じゃなくて「え……脳筋じゃなかったの?」と言いたげな目だ。いや、私は戦闘スタイルは完全に攻めしか無いけど脳筋とは呼ばないだろ……と思うのだった。