アッシルベン魔帝国-4
『アッシルベン型糖尿病』という物を見てみると、現実世界の糖尿病よりもタチが悪いと思えるレベルの代物だった。ただ、塩の大量摂取による高血圧も統合されており、この世界に医療関係者が転生または転移しても知識チートは出来そうに無いと思える。
前提条件としてこのアッシルベン魔帝国の国民は『グローマ』という魔法の陣を乳児期に親または孤児院長に刻み込まれこの魔法を常時使うことが出来るようになる。で、この『グローマ』という魔法の能力は、老いを遅らせるという魔法だ。
実際長く生きれば生きるほど魔力血路はより質の良い物となっていく為、本来なら人間であったとしてもエルフ並の寿命を持つ筈なのだ。だが、この国最高クラスの魔法使いだった前国王は70代で亡くなる程であり平均寿命も60代から50代となっている。
…ここまで寿命が短くなっているのも『アッシルベン型糖尿病』の影響なのだろうと思えてくる。実際『グローマ』という魔法には病を寿命を消費する事で克服するという機能が付いているらしいからな……。それでも全ては無理なのか義眼や義足を付けている物も多いらしい。実際例の客も両脚が木製の義足になっているので完全に砂糖の大量摂取が問題となっているのだろう。
「……まぁ、他の国に逃げれば解決するらしいけどな……。幸いここに隣接する国はまともな食環境だし。まぁ、目覚めてくれる奴が少ないという障害があるが。」
「…まぁ、産まれたときからこうだと仕方ないですよね…。」
テキトーに聞き耳を立ててみると赤ん坊にすら甘いしょっぱいの無限ループが続くレベルで哺乳瓶ならぬ哺糖瓶と哺塩瓶の使い回しを聞いて信じられない物を見る目で見てしまった。一応母乳でも良いのだが『アッシルベン型糖尿病』の影響からか出てこない人間が多いらしい。
まぁ、乳児期から砂糖の甘さと塩のしょっぱさに洗脳されている訳で、普通の味では旨みを感じないらしい。その為ステーキにすらガトーと言えそうな程カチカチになる位の砂糖をまぶすし、ソースにも砂糖と醤油が狂いそうな程入れられているのだ。
「……正直、この国を滅ぼして再生とかしたいけど、ハンバルシア軍帝国の時とは明らかに状況が違うんだよな……。あれは農民と料理人、一部の王族が生き残っていたからこそどうにか出来た訳で……こちらは全員が狂ってるからな……。」
使える奴だけ残すにしてもギリギリ二桁国民が残れば上々なレベルだ。……つまり、完全に詰んだ。この国の中枢でどうにかしないといけないレベルになってしまったのだ。………そう思うと私は面倒くさい事になりそうだと思いながらある物を取り出す。
それは漁村で知り合った鰻屋のう巻きであり、あの美味いとはとても言えない宿の食事を取った後だと物凄く美味いと感じてしまうのだった。……いや、本当に美味すぎて涙が出てくるくらいだった訳だ……じゃあどれだけ嫌だったんだあの食事はと思うのだけどね。