新たな二人の王女様-2
「とりあえず私はレルミー・アルド。一応この国の元王女で大分前にお父様を殺そうとある儀式を行ったんだけど、正直言ってそこのお嬢ちゃんが殺せたのがおかしいくらい強かったよ。なんせ『魔人契約の書』で現在可能な最大の儀式を使っても殺すどころか傷1つ付けさせてくれなかったからね。」
「『魔人契約の書』って確かお父様が滅ぼした『エドリング魔法帝国』の国宝だった筈ですよね?」
「そうなんだけど、これで行う儀式で必要な素材を集めるのがかなり面倒だったんだよ。だからある儀式で妥協したんだけど、それが間違いだったのかもしれないけどね。」
そう言いながらレルミーは監獄の中にある机の上に置かれた『魔人契約の書』を手に持った。とりあえずそれを無許可であるが『鑑定』してみるとヘレンを蘇生させた『奇跡の雫』と同じくらいの価値があったのだった。
魔人契約の書
・価値 87京G
・遙か昔、『アンクシタークス神魔帝国』の王ハルマキが吸血鬼、月狼鬼、魔鬼、石蛇鬼、馬鬼、洋牛鬼、岩鬼、一眼鬼、歌鳥鬼、大蛇鬼、歌魚鬼、首無鬼、巨鬼と呼ばれる魔人と契約し、この書の魔方陣の中に一族特有の力を封じ込めた。素材を集め瓶に詰めた後、魔方陣に魔力を籠めて瓶を上に置くことで薬が完成する。それを飲み干す事でその特有の力を手に入れる事が出来る。使用回数は無限で失敗のリスクは無いが男性の場合のみ実行不可となる儀式も存在する。
……全部鬼と表記されているのは『アンクシタークス神魔帝国』では魔人の名前に全て鬼を付けるという風習があったかららしい。ただ、なぜ『アンクシタークス神魔帝国』の物が『エドリング魔法帝国』の物となっていたかだが、よくある話最盛期の王が死んだ後に王の継承権で揉めて3つに分割されたという理由らしい。
ただ、鬼と書くと魔鬼やら馬鬼、歌鳥鬼に洋牛鬼等分かり難い名称も多く存在する。大蛇鬼に首無鬼、岩鬼や巨鬼、一眼鬼等分かりやすいのも多数あるけどね……。
「まぁ、あのお父様は吸血鬼の儀式で手にいれた『霞化』だけじゃあ太刀打ちできないのは仕方なかったかな。『王の裁き』で生身で受ければ致命傷になるレベルのアーツを繰り返し使ってきた訳だし。」
一応『王魂の林檎』を食べていない奴に対しては『王の裁き』等で楽々倒せるくらいの強さを王は持っていたらしい。まぁ、弱い武器に全力で辺り、なんとか弾いた事で威張っていた風景しか見てない私は一応王は強かったのかと少しだけ安堵するのだった。