王の子達-2
……『王魂の林檎』を喰った者の子供なのにも関わらずあっさりと死んでしまったチェギスを見て、私は『鑑定』を使いチェギスのステータスを確認するも、『王魂の林檎』に関する項目は1つも無かった。
「麻痺を治す薬は残念ながら持ってきてないんだ。本当にすまない。」
私はそう言いながら厨房の人間達に謝ってから王の子共達の部屋へ向かう。……最初は兵士の待機所を経由する遠回りな道を選ぼうとしたのだけど、厨房にいた人間達がチェギスを殺してくれたお礼という雰囲気を出しながら料理を運ぶ用の扉の位置を教えてくれるのだった。
「……で、この扉から1番近いのは王女ヘレン・アルドか。年は私と同じ16でさっき倒したチェギス・アルドとは違い民の平穏を第一に考えている。……故に父親のロジャー・アルドからは異端分子として見られ20になった頃に別の国へと嫁がせる事が決まっている。……典型的な『悪い王を倒した後に出てくる良い奴』な娘だという事は分かったな……。」
これは厨房の人間から聞いた情報だ。もっとも、あくまで噂話でしかないと付け加えていたのでただの演技なのかもしれないという可能性も出てくる。まぁ、百聞は一見にしかずとはよく言う物なので私は彼女の部屋をノックするのだった。
「……ど、どちら様ですか?」
彼女……ヘレンはドア越しにそう問いかけてきたが、面倒なのでサクッとドアを開けてヘレンの姿を見る。ただ、ドアには鍵が閉まっていた痕跡も無く何の抵抗もなく開いていた。
「……せ、せめてここに来た目的だけでも教えてください!」
彼女はそう言いながらもベッドから出てくる気配が無い。……何かがおかしいとは思いつつも私はそのまま彼女の部屋を進んでいく。ただ、部屋の中には何の防犯トラップも仕掛けられておらず敵が攻めてくればすぐに殲滅させられる程のセキュリュティレベルが低いのだ。
「……まさか、侵略者ですか?でもお父様はここから出れば死ぬ魔法を掛けられていますし………。……まぁ、私はここで死ぬのでしょうね……。この部屋に掛けられた魔法は一人で解除できる程の規模では無いですから……。」
まぁ、疑いを向ける訳では無いがとりあえず部屋の中にある物全てを『鑑定』する。すると確かにいやらしい魔法が存在していた。『王の許可した者以外が外に出るには部屋の主を殺さなければならない。』『部屋の主は外に出ると死亡する』等の面倒くさい事ばかりの魔法が掛けられている事が分かった。
ただ、彼女を見て私は前にやろうとして出来なかった事を実行してしまおうと思い、彼女……ヘレン・アルドと対面するのだった。




