王の子達-1
城の中を進んでいく時に思ったのは、構造がかなりザックリとしすぎている事だ。……というのも入り口がどこか分かり辛い地下に死刑囚等を入れる為の牢屋がある事以外は全て城に入った直後の地図に書かれている。ついでに言えば『鑑定』で調べてこの地図に嘘偽りが無い事も判明しているのである。
「……とりあえず先に軍の人間の方から片付けてしまおうかな…。」
私はそう言いながら王の子供等の部屋とは反対方向にある軍の待機所となっている部屋へと向かう。その間、私は誰にも会うことは無かった。……もしかしたら入り口にいた魔道士の時点で私が死んだとでも思っているのか?と思える。実際防御魔法等を使えば血の出ない絞殺などを実行できる距離に近づけないし、弓矢等での狙撃も同じ理由で防がれる。で、何も知らずに斬り付ければその場でドカンだ。
「とはいえ浮かれすぎだろ……。3つある待機所の内、まともに機能していたのは1つだけで残り2つは酒盛りしてたな……。まぁ、反撃しようとした奴や酒が消えた奴もいたにはいたけどな……。」
正直言って扉蹴飛ばす→『アンサンブル』→終了という流れで呆気なく終わってしまった。ただ死に際に「厨房にいる人間の一部は軍に逆らっている」という話題が手に入ったのは良しとしようと思う。……ただ、待機所の中は全て地獄絵図が完成しているため、サッサと待機所から去るのだった。
いや、小腸大腸等の管の様な物から赤みがかった肝臓、異世界の軍人は煙草吸わないんだなと感心しながら見る鶏肉の様にも見えてしまう肺、汁が滲み出ている脳みそやチリチリな糸の様な肉でどうにか繋がっている目玉……。そんな光景を長く見た状態で厨房に脚を運べるか!!と思う私なのだった。いや、人殺している服のまま行くのも間違っていそうだけどさ……。
ため息をつきながら厨房に着くと、そこには既に血がいくつも飛び散っていた。それはケチャップやらなんらかのソースが飛び散って血が見えるという物では無く、間違いなく人の血だった。ついでに言えば血が床などに完全に染みこんでいる訳では無い為つい最近流れた物だろう……で、ここで面倒くさそうと思うのはこれが人間の血である事だ。
「……なんだね君は?僕の名前はチェギス・アルドだ。」
「……。」
現れたのは頬の肉だけプルルンと膨らんだ中肉中背の眼鏡を掛けた男だった。ただ、彼は王への適性が無い事、このまま話を聞いていても面倒くさい事、そして厨房の人間を戦が始まった時に腕が半年ほど動けなくなる毒を塗ったレイピアで怪我をさせた事からサクッと『ユンリンマル』を使い殺して置くのだった。