宣戦布告-6
翌日、私は軍人以外の国民をとある農地に集めていた。中にはエンブレムを失った軍人も数人いる。一晩経った今も顔の腫れが治らず、身体中痣だらけのアベルトがその代表格だと思う。しかし、彼等を保護して良いのか?という事に関し私は『真実の鏡』というアイテムを使う事にした。
……正確には『鑑帝』という『鑑定』と『帝』から派生したスキルの技能なのだが、その辺りはどうでも良いだろう……結構万能だし。『真実の鏡』の効果は『指定した誰かを裏切るか裏切らないか』を知る事が出来る。これは複数人にも可能で、どの様なジャンルで裏切るかも分かるのだ。
その結果、農民に恋した元少年兵以外は弾丸になる事が決定した。別に殺さなくても構わないのでは?とアンカラにも言われたが戦の終わった後、畑を全て燃やし新たな軍国家を作り出そうという思考のアベルトや、似た様な思考の者達を構成させるよりは時間が掛からないと言えば納得して貰えた。
「まぁ、流れ弾で死ぬ人がいないようにガードしておいてね、アルミナ。流石に畑を荒らしそうだからあれは使わないけど。」
「分かってますよ。……でも最近剣城ちゃん、人を殺すことに躊躇する事が無くなっている気がしますけど……。」
「それだけ躊躇出来ない奴ばかりなんだよ。でもそろそろ躊躇出来ない相手を見つけないとね……。」
「……俺に対しては躊躇はしてたような……。」
「それはガンダレスが規格外の相手だったからだ。下手な手を撃ったら死ぬ相手にどうしたら躊躇無く突っ込めるか教えて貰いたい。実際近付いても無いのに四肢切断されてんだぞ?」
それを聞いてガンダレスはなんとなく分かったような顔をした。いや、そこは全部分かって貰いたいと思える。ガンダレスの常識は私と掛け離れた物なので仕方ないと思うけどね……。
「で、そろそろ軍人達が全員戻ってくる頃だな。そして、死にたくない奴等の選別会でもある。まぁ、王に勝てるかは微妙だけどね……。」
「……マスターなら多分無傷で王も倒せると思います。」
「ありがとね、ランタン。じゃあ明日に備えてさっさと寝ますか。」
そう言いながら私は眠りにつき、戦の前日となった。その日、軍で書記をしているという者が戦の開始時刻を書いた紙を渡した後、土下座していた。話を聞くと彼は馬鈴薯の仇を取ってくれと叫んでいた。……どうやら彼は馬鈴薯の調理が好きらしい。その為馬鈴薯を腐らせて捨てるという行為を軍がしていた事に憤慨しこちらに来たらしい。まぁ、『真実の鏡』で悪い結果は出なかった為、私は彼をこちら側に引き込んだのだった。




