宣戦布告-5
準備期間の3日間、農民達や一部の国民の信頼を得ていく事で、馬鈴薯の製作や流通に関して必要な人材を確保していった。ちなみに一部の国民の支持を得るときに役に立ったのがエンブレムを無くしたアベルトや、一部の軍人の首が伸びきった死体だった。
これにより軍に悪いイメージを持つ者や、稼ぎを殆ど持って行かれる商人等が賛同していた。まぁ、一部の商人はきな臭いけども、それは今考えるのはやめておこうと思う。少なくともそれだけの理由で殺せば良識な商人殻の支持も無くなるからだ。
「まぁ、なんというか……魔王と武器屋の関係になっていたな……。気持ちは分からなくも無いが。ただ親方と弟子の関係がこうもあっさり崩れるとは思っていなかったが。」
簡単に言うと、この国にある85の鍛冶工房の内親方と弟子が供にこちらを支持したのは40、親方のみが30、弟子のみが3、両方が軍を支持したのが12という事になった。まぁ、こちらを支持した工房は多くて18人、最低値だと僅か3人という小さな工房ばかりだった。
両方が私を支持してきたのは蝶番やら鍋等の日用品を多く扱う所で有り、こちらが勝つというか期待している様な形だった。一方両方反対の工房は100人は優に越える程の大工房であり、剣や鎧を多く作っている事が多い。その為戦争をしなくなるのは困るのだろう。
だが、武器を作る工房でも親方だけがこちら側に付く事が多かった。特にこの国で二番目に大きな工房である『テェンナ工房』の親方は剣や盾を作っていたがこれからは戦争では無く農作業の為の物を作るとその場で宣言し、弟子達が全員国一番の工房へと移籍を決め、親方を罵ったのだ。
「……まぁ、それだけ戦は人を変えてしまうという訳か。」
「いや、替えたのはアンタじゃろ?まぁ、あの弟子達は正直弟子というよりは下心持って工房に入ってきたしの……。」
「そりゃあ、これだけの美人が親方なら入る奴も多いだろうな。まぁ、こちらとしては腕の良い鍛冶職人がこちら側に付いてくれるのは非常にありがたいが。」
「少なくとも戦に巻きこまれて死にたいとは思わないからね…。この前だって奇襲を受けた時、窓から入ってきた矢で何人か死んだ訳じゃし。避難勧告位は出しても問題無いと思うんじゃけどね…」
避難勧告をしなければそうなってしまうのも仕方ないだろうな……と感じながら私は国二番目の大工房を経営していた女性、アンカラを連れ帰っていく。……ちなみにアンカラはクォーターエルフであり、現在90歳だが未だに20代で通用する美貌を持っている。……まぁ、こちら側に付く鍛冶工房の親方達をまとめる為に最年長の彼女が適任なので私は特に意見を言わずに話していくのだった。