宣戦布告-2
「……あのエンブレムは王の盟約が籠められており、私達農民が攻撃すると激痛が襲ってくるのです。なので嫌々ながらそれに従うことしか出来ないんですよ。もっとも、エンブレムを外せばあの様に集団リンチも可能になる訳ですが……エンブレムを着けた者の魔力でしか焼けないのです。」
「……面倒だな……。だが、あれでも一応軍の人間だ。エンブレムが無いとしても攻撃するのはどうかと思うんだが……。」
「エンブレムを無くした者は余程の狼藉を働いて軍を追い出されたか、軍から逃げ出した愚か者扱いですからね……。実際私もその1人ですし。」
両目を赤い布で隠している女性はケラケラと笑いながら私に話をしてくれた。彼女は医学的には盲目となっているがスキル『状況把握』の影響で盲目になる前よりも視野が広がっているという。
「……まぁ、その話は後にして私はここで取り扱っている馬鈴薯を購入したいんだが……。」
「あぁ、それなら1個100Gだ。」
「……高いのか安いのか分からない値段だな……。」
「これは軍に細かい計算を瞬時にやれる人材が少ないからって理由の値段なんだよね……。ついでに言うと品質を維持するために必要な物が購入しにくい収入にしかなってくれない値段設定でもあるね。そのくせ半分以上を無駄に使われるからなぁ……。」
彼女はそう言っていると、急に立ち上がる。そして彼女は後ろ側を向くと、そのまま走り出した。何があったのか気になった私はアルミナ達をその場に残して彼女を追う。
彼女が走るスピードはそこそこだったが農地をいくつか越えた所まで……約700㎞の距離を息も切らさず走っていた。まぁ、私も息切れせずに走れたけど、農地を荒らさないように気を配っていた為、微妙に疲れてしまったのだった。
彼女が立ち止まり、ある一点を見つめた。そこでは用具入れらしき納屋が軍人によって焼かれ、畑に生えた馬鈴薯をベチャベチャと潰していた。その様子を見て怒りの感情を表に出しているのだった。
「……アベルトという男は囮……本命はこちらでしたか。……しかし、ここで私が出るわけにも行きません……。」
「なら、私が話をつけてこよう。……最悪、あの軍人達は死ぬかも知れないが。」
「構いません。軍の演習と銘打って納屋を燃やしたり畑を荒らしたりする者達は許せませんからね……それがかつての同僚であっても答えは変わりません。」
「じゃあついでに宣戦布告もしてきますかね……。」
私はそう言いながら軍人達のいる方向に歩き出す。ただ、軍服だとややこしくなりそうなので『時空帝』を使い服装を変えたけどね……。