番外編 平行世界の交流会-12
どうやら黒華鉄家の元副料理長はこの『夢のレストラン』で働いているらしい。まぁ、食材が業務用と少し安い物になっている事から宮永は味が出せないと思っているのだろうが、彼は高級食材を上手く使うことが出来ないタイプなので問題は無かった。
「それにしても、料理長には敵わないですね……。最後の隠し味が未だに分からないんですよ……。」
「やはりそれでもう一歩という感じになっているんですか…。」
その後、佐倉さんは私に現状を聞いた後に通常業務に戻っていった。ただ、私が午後から会おうとしていた人物はシフトの関係で今日はいないと言われたので、私は少しだけガッカリとしてしまう。
「そうか……。コルロギさんは今日はいないのか……。なら『宝石の館』に寄る必要は無くなったな……。」
「コルロギさんとはどういう方なのですか?」
「元黒華鉄家専属の宝石加工者……で私の宝石加工の師匠の一人。主に指輪とかのカットを担当していたんだよ。美華家になってからはすぐに切り捨ての対象にされたみたいなんだよな……。」
母さん達は職人を軽視する事は無かった。実際コルロギを初め多くの腕の良い職人が黒華鉄家の収入にとても貢献している者なのだから。だが、糞親父と糞女は金を少しでも使いたくないのか職人を安い所で加工することにしたのだ。
「まぁ、その関係で質が著しく低下して顧客が少しずつ減っていたけど…極めつけとして、どこかの国の王妃様が質の低下に憤慨した結果、大口顧客は全滅した……という感じかな?コルロギさんの技術はそれくらい凄かったわけ。」
「そうなんですか……。でもその人がなぜこの遊園地に?」
「コルロギさんの工房のある土地に遊園地が建ったんだよ。本当は立ち退きして貰おうと思われていたらしいが、流石にあの工房は別の土地に建て直すのに何億か掛かるレベルだったらしいからな……。」
ただ、最近は弟子というか若い人も雇うようになったらしい。……まぁ、そろそろ婚活しないと色々とマズいことに気付いたらしい……というのも彼の年齢は現在29歳なのだ。
「まぁ、職人として孤独で生きようとはしていたらしいけど、職人同士で結婚した両親が悲しそうな目で見てきたから始めたらしい。相手を選ばなければすぐ結婚は出来るとは思うけどな。」
「話だけで判断すれば確かに良さそうな人ですしね……。」
しかし、コルロギが求めるのは同じ宝石職人である事から婚活は難しくなるだろうと思う。いや、他の職人でも良いじゃ無いかとは思うのだけどね………。