番外編 平行世界の交流会-10
「いらっしゃいませ……って、文人?なんでここに来てるの?」
「いや、お前こそなんでここにいるんだよ、美織……。」
「何って、バイトよバイト。」
「あの~、文人君、この方は?」
「あぁ、蓮に紹介するの忘れてたな……。コイツは幼馴染で家が隣の五十嵐 美織だ。まぁ、たまにこう突っかかってくるんだよ。」
「……………そう、ですか。」
なんか修羅場が始まりそうな空気が漂い始める。多分ラブコメ主人公的な鈍感体質の文人という男は修羅場と感じず、彼女っぽい蓮と幼馴染の美織の心中が修羅場になっているだろうと思える。
「まぁ、いいや。とりあえず席に案内してくれよ。」
「………分かったわ。とりあえずあちらの席へ行ってくれる?」
美織がそう言って案内したのはカップル席では無く普通の席だった。それを気にせずに座る文人とハッと何かに気付いて静かに美織に視線を向けバチバチと火花を散らす蓮。これを見て私は確かにラブコメに近いな……と感じてしまうのだった。
「そうだな……。主人公を好きな幼馴染が、主人公が他の女とまるで恋人の様な雰囲気で入ってくる場面に出くわす。そこで席に案内するのだが、2人がカップルと認めたくない幼馴染は2人を普通の席へと案内する。そこで主人公の彼女は幼馴染が主人公を好きなのだという事、幼馴染という絆の深さから対抗意識を持ち合わせていくという展開だろうな。」
「そうですね……。ただ、ゲーム版の『ラブラブのフリ委員会』は蓮という人のポジションの人とは違って序盤はフリですけど。」
どうやら元となったゲーム、『ラブラブのフリ委員会』の展開として、主人公は風紀委員の部室と間違えてラブラブのフリ委員会の部室に入ってしまい、委員会メンバー全員の下着姿を見てしまう。それから通報を免れる為、メンバーの1人を選んでラブラブカップルのフリをしろという条件を飲むのだった。
ただ、隠しキャラがフリ委員にも何人かいてフリヒロイン選択時に『答えは明日まで待って欲しい』とか『床をぶち抜いて逃げよう』と『どうせならハーレムなんてどうだ?』という様に隠しキャラに通ずる選択肢が条件をクリアする事によって追加されるようになるらしい。
ただ、委員会メンバーとは最初フリだとしても委員会メンバー以外……例えとして幼馴染や委員長に義妹、バイト先の先輩や委員会メンバーの誰かの家に仕えているメイド等はフリにならないのでやり込み度が半端ないらしい。
「……まぁ、修羅場をいつまでもみている訳にもいかないので注文してしまいますか。」
実際アンコールを貰ったかのように別のバイトと来店カップルが店先で修羅場への点火準備が始まっていたのだ。……バイト全滅にならなきゃいいけど……と思いながら私はメニューを選ぶのだった。




