敗北の証-3
「……じゃあ、次の質問。旅の目的はなんだ?」
「こちらの世界で25年前に転生し生を受けた私の母を探している。それとこちらの世界と同じ食材や、美味い物探しだな。」
「……マザコンですか?」
「マザコンでは無い。父親が糞野郎だっただけだ。」
それを聞くとガンダレスは同情するような目で私を見た。まぁ、『獄炎帝』になる時に私が穢れた血と叫んでいた事や、その後悪党の血が無くなった事をその目で見ているので分かるのだろう。
「……まぁ、団長の両親もそんな人でしたからね……」
「…ジルフェの父親程では無いがな……。」
どうやらガンダレスもジルフェも私同様父親が糞野郎な感じだったらしい。まぁ、共通点を見つけたとは言ってもジルフェから向けられる視線は変わらないのだけどね……。
「……まぁ、俺の両親も奴隷だったからな……つまり俺も奴隷になっていた。まぁ、最初は人形を取り上げられて安物でボロボロの剣を握らされて戦地に駆り出された訳だがな。」
「……その奴隷契約、今はどうなっているんだ?」
「奴隷の契約主が死んでいるからな……魔力で無理矢理俺自身が契約主に変更した。つまり、この体は俺自身の奴隷という事になっている。」
ただ、契約主を殺すには死を覚悟しなければならないと思うのだが……と思ったが、それすらも凌駕する程の何かがあったのかと思える。……まぁ、考えられるのは『王魂の林檎』だ。あれは瀕死の状態でも蘇生できる物なので契約主を殺す時に喰ったのだろう。
「ただ、俺は奴隷時代何も喰えていなかったからな……。魔力で毒を抜き、石を砕いて口にしなければ死ぬくらい何も食べられていなかったからな。それが俺の両親が給与を全部取り奴隷から、奴隷を使う側に立ったからな。」
「子供を引き取るという事は無かったのか?」
「無かったよ。子供から搾取する事ばかり考えていた人間が奴隷から解放すると思うか?」
普通に考えたらしないだろう。奴隷から解放される為に必要な程の金を稼ぐことの出来る奴隷を、何も出来なさそうな子供に戻すのには余程の愛が無ければ無理だ。そして、そんなガンダレスの両親は愛を持ち合わせていないだろうしな……。
「ただ、『王魂の林檎』を喰った後には縋ろうとしてきたな。なんせ王の親となれる訳だからな……。まぁ、両親は殺したよ。奴隷制度の発達しすぎた私の故郷の国ごとな。」
まぁ、国ごと殺すくらいガンダレスは両親を恨めたのだろう。いや、それぐらいでなければガンダレスも気が治まらないだろうしと感じながら、国1つを滅ぼしたと語るガンダレスによく立ち向かえたなと思うのだった。