獄炎帝-4
盾と槍を持った集団がガンダレスに向かっていくも、すぐに倒されてしまうだろうと思っていたのだが、ガンダレスの一撃で倒されることが無かった。
「……?」
ガンダレスは『ファランクス』の兵隊達を攻撃した際、思ったよりも硬いと感じたのか普通に殴るのを止め、回避の方向にシフトしていた。まぁ、『ファランクス』は基本的に突撃部隊と認識されている事もありそのまま突き進んで行った後に槍と盾諸共兵隊達が消えていくのだった。
「………なんというか…、まだ闘う方法は残ってる訳かな……。『獄炎魔法』と『殺戮魔法』を混ぜ合わせる事で簡単には崩せない攻撃が可能になる訳か……。ただ、兵法とかはあまり知らないけど。」
『ファランクス』は世界史の序盤で習う戦術の1つだが、正直言って日本史や世界史では人物や出来事ばかりしか習わない為か兵法に関してはあまり頭の中に入っていない。それに『ファランクス』は空中に逃げられたらそこまでという感じの為連発してゴリ押しは出来ない。
「……『アーム・コキュートス』」
「それ神話とかまるっきり違っているだろ!!それに川をアームとして追加するってどうなってんだぁぁぁぁ!!!」
「…強化完了。これで存分に闘える。」
私が微妙に手詰まりの所でガンダレスがさらに強化してくる。ただ、嘆きの川を意味するコキュートスを身に纏う所を見ると完全に私の実力がガンダレスの格下である事を印象づけられてしまう。まぁ、今の私はガンダレスを説得して死…もとい人形化を回避すると言うのが目標なのでその辺りは仕方ないと感じるのだ。
ただ、このままだと拉致が開かなくなる気がしたので私はその場で土下座した。正直兵法ならば『グラボー』の中に出てきたコマンドを使えばどうにかできるとは思うのだけど、ガンダレスはそれにも余裕で対応できる策を出してくるだろう。
つまり、私の土下座という名の白旗は将棋の投了と同じだ。この先も攻める事は出来るが、確実に王手を取られる。ガンダレスが私に王手をする事は私が死ぬ直前で『ドール・コア』を入れられるという場面だろう。
まぁ、王手をされる前に投了できる程の力量になれていた事は完全に運が良かったのだと思う。少なくとも『獄炎帝』を修得できなければガンダレスの人形として第2の人生を過ごすという事になったのだろうと思う。
「……反撃をする気も無くなった?」
「あぁ、もうこれ以上闘うのは無理だ。」
「……じゃあ、殺すのも人形にするのも止めよう。ただ、敗北の証は着けさせて貰う。」
「……それは死を与えるという訳では無いよな?」
「今回は悪党の血が混じっている転生者だと思ったけど今のお前からはそんな気を感じない。まぁ、証は後で着けるからジルフェを呼び戻してくる。」
ガンダレスはそう言ってジルフェが向かった方角へと進んでいった。ただ、私はその間に糞親父を憎んだ。コイツの血が入っていたからこそ『獄炎帝』を得るきっかけが出来たのは奇跡と言える偶然で有る為感謝できない。なんせ糞親父のせいでガンダレスと戦闘になり死の恐怖とこれからの生活の不便を味わうことになるのだから。