表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
411/922

王魂の林檎と王の器-3

『王魂の林檎』

・価値  ???

・鑑定不能。どこかの文献に言い伝えがいくつかあるらしい。


いや、完全になんなのかが分からないってどれだけのレベルが必要なのか、それとも本当に正体不明の物なのか……ただ、毒では無い別の何かである事は間違いないだろう。そう考えながら私はガンダレスの持つ林檎を見る。


「……面白い便利な魔法を使うから人形に変えてみようか……。」


そう言ってガンダレスは手に持った林檎を私に無理矢理囓らせた。その林檎の皮は見た目とは裏腹に柔らかく簡単に咬みちぎれてしまった。しかし、吐き出すことは出来ずに飲み込んでしまう。まぁ、林檎の甘みや酸味などは全くない無味無臭な味だった為何の文句も無い。


「……ググッ……ウ……グゥアァァ……アァ……」

「…この林檎の回復力には毎度助けられてるけど、ここまで呻き声を出す程激痛では無かった気もするけどなぁ……。四肢を貫かれて心臓も8割くらい抉られてもピリッとした痛みしか来ないのに。」


ガンダレスに林檎を食べさせられた後、私の体は恐ろしいほどの悲鳴をあげながら再生していった。ただ、無から腕や脚を作られる激痛や体の中に何かが駆け巡る感覚から、うめき声をあげるのがやっとな程、抵抗する力が私には残っていなかった。


ただ、あの林檎は体を再生する力がある事は確かだった。実際ガンダレスもそれで無傷のまま私のラッシュを耐えきったのだから。ただ、痛みには個人差があるのか……ガンダレスにとってこれぐらいの痛みは本当に大した事が無いのか呆れた顔をガンダレスは見せていた。


ただ、私にはそんな事を考えている余裕は無くなっていた。頭の中に大量の「無」や「白」を感じさせるような、存在しているようで空っぽな情報が頭の中に入り込んでくる。これは恐怖や絶望という様な物では無く、単に私を私では無いものにする為の物だろうと感じた。


だが、この情報の波は次々と私を消していこうとするが……ある記憶にそれが近付いた時、私は必死に抵抗した。その記憶というのは、私の大切な家族や仲間の記憶だ。ランタンにアルミナ、ラピとアル……そして母さんの記憶だった。最初は糞親父や糞女の記憶を捨て駒としてぶつけて壁としていたが、本人同様薄っぺらい記憶達では敵うはずも無く数秒で突破された。


ただその後、私は叫ぶように守りたい記憶を叫ぶ。すると「無」や「白」の情報は一斉に色が付き始めた。この光景を見て私はやはりこれまでの私では無くなってしまう事を感じたが、大した変化では無いと自分の頭に言い聞かせ、現実での意識を取り戻すのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ