英雄の地 アルバストア-4
「その本か……。この街では図書館にある書籍がなんらかの事情があって使えなくなった時にはこちらに格安で売られてくるんじゃよ。勿論、魔導書等は別の街に売られるがな……こんな伝記や地図なんかはこちらで引き取られていくわけじゃよ。ちなみにお主が今持ってる本はガゴーゼンの肖像画のある最初のページが切り取られただけの物じゃ。」
「なら普通に使えるな。これはいくらで買える?」
「5000Gじゃな。まぁ、ページの欠損があるから9割引きじゃな。ただ、他にも買う物はあるじゃろうからじっくり探すと良い。」
店主の爺さんにそう言われた為私達はランクが高い魔導書をいくつか見繕ってから購入する。ただ、この様な街の中で高位な魔導書が多く存在している事も無く、合計800万Gで5冊買うという様な結果となるのだった。
「…まぁ、この魔導書は私が使うことになるだろうね……。魔力血路がまともなのは私しかいないわけだし。…まぁ、滅多に使うことも無いだろうけどね……。」
「そうだな。ただ、『アンシュリオン』がかなり安く買えたのは大きいのか?いや、店主も価値を知っている筈だと思うんだが……何か曰く付きでもあるのか?」
『アンシュリオン』
・価値 4億G
・強力な無属性の魔法を補助する事に特化した魔導書。その姿は本であるが、文字を物質に写しても同じレベルの補助が可能となる。
「まぁ、そんな事は気にしてられないな……。ただ、店主も首を傾げていたように見えたが気のせいなんだろう。」
「そうですね……。でもマスター気になりませんか店主の方はこれを買い取った覚えも無ければ手に入れた記憶も無くまるで誰かが意図的にそれを置いていったかの様な感じですよなのでこれに関してはかなり怪しむ必要があると思います。」
「でもこの魔導書には探知や追尾機能はついてないから何の問題も無い気がするんだよね……。」
そう言いながら私達は予定を早めてアルバストアの街から出て行く事にした。本来は図書館でもう少し情報収集をしようとしていたが、この本屋で必要な資料が購入できた事から出発の時間を早めた。
この判断が正解だったと思えるのは、マズい飯を高い料金を払ってまで食べなくて良くなった事なのだろうが、この時に私達は失念している事があった。店主が『アンシュリオン』の価値を気にせず安く売った事、転生者狩りが少し前この街に滞在していた事の他………強力な魔導書ならば『追跡』等でマーキングせずとも場所を関知する事が出来るのでは?という可能性だった。……まぁ、失策だと気付いたのは街を出てから3日目の取り返しの付かない時だったけどね。