トモダチ顕現アプリ-3
「格上の相手には通用しないってどういう事ですか?」
「簡単に言えば、時を止める能力は時を止め続けられないという事だよ。違いが分かりにくいけど、多分一番分かりやすい例えだと思う。」
そう言った後私はそれについての説明を始めた。しかし、この説明で伝わるかどうかは分からないのだけどね………。一応、図を書いて説明しているのだけど、自分でも理解できているか分からないのだけど。なんせ、手に入れてから5分も経っていないのだ。
「まず、銀の懐中時計の特徴としては……相手の動きと思考を硬直させるという形なんだよね………。だから相手の力が強ければこの硬直を吹き飛ばされるって訳。実際に世界を停止させる訳じゃ無いから。」
「結構複雑ですね………。」
銀の懐中時計は今の私の実力だと発動するのに数秒は掛かる。相手自身が止まっていれば『いつの間にか後ろにいた』と言わせるような動きは出来るのだが、動いている相手の場合は『動いている、反応できる筈なのに体が動かない』という印象となる。
しかし、私よりも実力が高ければ前述した状態が継続する時間が短くなる。そうなれば当然時間の停止も意味が無くなるのだ。まぁ、普通に止めていても2分が限界だという。2分を切った場合は自分にも時が止まっていた時のフィードバックを受けてしまう。それも相手よりも強いレベルで……だ。
「一見万能そうに見えても何かしらの穴があるのがこの世界だからね……。このガチャだってハズレが多く出る可能性の方が高いし。『洗浄結晶』やこの馬車、有能なスキルが当たった事は奇跡だと思うし、それが無かったら私は野垂れ死に近い事になってたね。」
廃教会には20分も留まっていなかったから、美華を生け贄にした後黙って逃げるという魔物に対する策の無いままだった訳だ。ミアッペ山脈の時も『殺戮魔法』を修得していなければあっという間に死んでいた可能性もあるしね……。
「まぁ、この『時空帝』は私の戦闘レベルと同等か数段上の者にしか使えない訳。多分これを使ってアルミナやラピと闘っても普通に負ける。『殺戮魔法』と組み合わせたとしてもラピは死なない体だし、アルミナも似たような事は出来る筈だから殺す………というかクリティカルヒットを一発出せるかも分からない。」
「そこまで自分の事を過小評価しなくても良いと思いますが…。」
「いや、このくらいの評価で十分だ。なんせ私は一撃必殺になり得る物しか持ってないからね………。」
ただ、トモダチ顕現アプリを使ってこの能力を最大限に発揮するための訓練をしてくれる人を呼び出した方が良いのか?と考えてしまう。少なくとも一撃必殺では無い戦い方を覚えておかなければならないと感じたのだ。……ただ、この決意は後の闘いで私の命を救うことになるのだが、それはまだ先の話だ。また語るときが来るだろう。




