漁村での収穫-7
糞ババアは愛しの孫に出会えると信じて疑わないが、美華 結城という男が死んでからそれなりの時間が経っている。私は確認していないが余った肉や骨も既に土に還っただろうしね……。まぁ、その関係で糞ババアが美華に会うためには死ぬ事しかないのである。
しかし糞ババアは愛しい孫が生きている事を信じて疑わない。それは糞ババアがチャットの存在やガチャの存在すら知らないからだろう。もしガチャで当てた武器ならば私は握りつぶす事が出来なかった訳だし、アルミナみたく実力差が大きすぎる相手になるかもしれなかった。
ただこの世界で育った環境が違ったのだろう。糞ババアはアルミナのレベルに全く追いつけない所か、あの雑魚かった市長一族の者よりも弱かったのだ。まぁ、鞭さえ使えれば新人潰し潰しくらいは出来たのだろうけど。
ただ、糞ババアの実力は力で全てをねじ伏せるという超パワータイプの者だった為新人潰しの男をぶっ飛ばせた。だが、敵と向かい合ったらぶっ飛ばす、敵に近づけたらぶっ飛ばすという某無双系ゲームでひたすら強攻撃を連打して行くような感じの為、無自覚の隙が多すぎるのだ。
それに糞ババアは自分が勝者だと疑っていない為、戦闘時以外は完全に隙だらけなのだ。……正直、よくここまで生き残れたなと思える程警戒心が無い。まぁ、武器を持っていない者は無条件で襲われない、それ以前に私を奴隷として見ているからそんな事してくる事は無いと思っているのだろう。
ただ、私はとりあえず糞ババアのこの世界での人生を確認する。すると糞ババアはそれなりの名家に産まれ、そのまま我が儘言い放題の生活を送っていたらしい。しかし家があっさりと没落した為別の街で冒険者として活動しようとして……現在に至るらしい。
「………そういえば、愛しい孫に会って最初に言いたい言葉は何かあるのか?」
「そりゃもちろん会えて嬉しいと言うわ!!きっと喜んでくれるだろうしね。」
私の数歩後ろに待機しているランタンが今にも仮面を付けそうになっていたが私はそれはしなくていいと合図する。少なくともこの糞ババアは私の手で殺しておくべきだと思える。……なんせこれまで私は自分の手で人を殺していないのだ。人を斬ったことは一応あったが、あれは相手が完全に油断していたからであり本気を出せば数分も経たずに負けていただろう。
「………じゃあ、最期の言葉はそれで良いね。糞ババア。」
私はそう言って糞ババアの首に手を置いた。そしてある言葉を私が口にした瞬間、糞ババアの体だけが灰となり、サラサラとした灰は風により空へ飛んでいった。その時私が思ったのは、糞ババアを殺したこの魔法『灰燼』はあまり使わないようにしようと思いつつ、初めて自分の手で人を殺めた感触に慣れようとするのだった。