漁村での収穫-5
「ぶったわね…………私の顔を!!生まれ変わり若さを取り戻した私の顔を!!美しい私の顔を!!なぜ奴隷となるはずの貴方がこんな事できるの!!もう死刑!死刑よ!!」
糞ババアは醜く歪んだ顔をしながら私に掴み掛かってくるも、軽く足ではらうだけで簡単に転び、美しいと自称する顔にさらに傷がついた。………だからなんでそこまで叫べるのだろうと思いながら、糞ババアを観察してみる。
「私の愛しの結城ちゃんはどこなの!?すぐに連れて行きなさい!!アンタは結城ちゃんの奴隷でしょ!!そんな事も自覚しないで生きていけると思ってるの!?前は逃げ出せたと思うけど、今度は逃げ出せると思わないでちょうだい!!どうせ体を売って生きてきただけの雌犬が!!」
「………言いたい事はそれだけか?」
私が威圧的な態度でそう聞くと糞ババアは黙り込んだ。しかしハッタリだと勘違いしたのか、すぐに愚痴を再開する。……基本的に結城はどこにいる?とか、結城が心配なの!という事ばかりなので聞くのが面倒になってきた。正直言って出来た孫に出来ない孫が奴隷にされていないのはおかしいという意見だからな………。
「そこまでアレに会いたいのなら会わせてあげようか?」
「ゆ、結城ちゃんをアレ呼ばわりなんて…………。アンタ、妾の子で有り美華家の奴隷である自覚を無くしたの?それなら再教育してあげる。私のこの『鞭術』でね!!これで従わなかった相手はいなかったんだからね!!」
糞ババアは美華の事をアレ扱いした事に憤慨したのか糞ババアが得意と自称する武器で攻撃してきた。ただこの時思った事と言えば、どれだけコイツ等の頭は悪いのかという事だ。妾の子は書類上で言えば美華の事となるのは明確だし、たったのレベル20の『鞭術』で私を教育できない事くらい分かって欲しいものだ。
「………………………せめて不意打ちなら不意打ちらしい流れでやってくれないかなぁ…………。明らかに今から攻撃しますという流れを相手に見せてるじゃん。せめて鞭の質くらいはどうにかしなよ……。」
「な、なんでよ!!なんで私の鞭がこうもアッサリと摑まれるのよ!!奴隷なら素直に受けてから謝罪するはずでしょ!!そんな事も出来ないなんてアンタは人間の中でゴミよ!ゴミ屑よ!!」
………なんでこうも美華家の者達は自分が主である事を疑わないのだろうかとこうなった原因を考えてみると財団を乗っ取ったからこうなったのでは?となる。……………ただ実力行使じゃなくて偶然に偶然を重ねた結果で有り、一部の重鎮以外の支持が全くない状態で乗っ取っただけの奴等に主と呼ばれる様な威厳は無い。
本当に威厳があるならば美華家は無能な長男がいなくなっただけであれだけの大ダメージになる事は無い。むしろそれをバネにして伸ばすくらいで無いとお家乗っ取りという下克上を達成したとは言えないのだ。
だが、そう言うとさらに奴隷や負け組やらと五月蠅くなるのは分かりきっているので私は特に何も言わずに掴んでいた鞭を握り潰し、使い物にならなくしておくのだった。下手すると私がやることをやる前にランタンが殺しに掛かりそうだしね………。