漁村での収穫-3
「…………………………一旦出直すか。」
「そうですね、マスター。少なくともこの中に入って行くには勇気というよりは忍耐が必要な気がします。」
簡単に言えば転生物や主人公最強系の小説でよくある新人潰しを潰すという場面に出会ったのだ。正直に言えば転生者の手掛かりになりそうだったのだけど、この空気の中に入って物を売ろうとは思えないのだ。…………………それに、新人潰しを潰す場面を短時間で二度も見たいと言える様な酔狂な人間はあまりいないだろう。
「……………………………………………で、そこで待機しているアンタも似たような感じか?」
「あぁ。何というか…………喧嘩の最中だったのでな。流石に入って行くのもなんだったからな………。ただ、宴でベイカーズがいないから調子に乗る奴もいるんだよ………………。」
「あのひょろ長い奴とその仲間が出て行って暫くすれば騒ぎも収まると思うのだが………………。」
「一向に出て来る気配が無い。もう面倒だから裏口から入るべきだろうか……………?」
私とランタンがギルドの外に戻ると、そこに先客がいた事に気がついた。彼女は少々露出の高い鎧を着ており、背に銛と木製の丸盾を着けていた。………………簡単に言えばビキニアーマーの露出を抑えた服装で、ギリギリ痴女では無いと思える服装だ。
「………………………………ただ、チラッと見た感じだがあの新入りはかなり嫌な感じだったな。正直言って関わりたくないという雰囲気があった。単に力が強いというよりは供にいれば厄介事に引っ張られるという類いの物でな。」
「それ、あながち間違っていないですよ。関わりたく無いと思う事は正解です。まぁ、そろそろ騒ぎも収まるので私は入りますが、私が出るまで入らない方が良いですよ。」
「………………………何か意味のありそうな物言いだな…………。まぁ、忠告は有り難く受け取っておこう。」
彼女がそう言ってから私はギルドの中に入り、さっさとギルドの登録を行った。まぁ、狩猟も生産も十級からという事にはなるが、身分証の代わりみたいな物として扱うため特に問題は無い。ただ、冒険者協会の説明に関してはガイドブックを貰ったので困る事や騙される事は無いだろう。
「……………………じゃ、次は買い取りカウンターに進むか………。」
「……………マスター、何か視線を感じるのですがあの人も『鑑定』持ちなのでしょうか……………?」
「あぁ、もう私の事に関しても認識してるだろうね。…………まぁ、私はアレを潰しておきたいからアレが出てくるまでギルドに入らないなんて事はしなかったんだよね………。」
最初に言っておくが、この『鑑定』持ちは私が探し求めていた人間では無い。だが、私に寄生するか奴隷扱いしてくる様な悪い芽である事は確かな為、彼女を駆除する為に私はこのギルドの中に入っていったのである。