漁村の宴-4
「彼は才能が無いことを自覚していましたから、家を早めに出て別の職に就こうとしていたのですが、色々あって鍛冶屋の道に戻った訳です。ただ、それまでに色々とラブコメみたいな事があったらしいですけど。」
「おっさんから話を聞く限り大分モテそうな雰囲気だったらしいからな…………………。だが、前世の方もそうだったのか?」
「私よりも結構年上なので誇張されている部分もあるらしいですけど…………………彼が女よりも筋肉というか男を好んでいなかったら重婚出来る国へと旅立っていたかもしれませんね。流石に職人だと奥さんが何人もいたら愛をあまり注げそうに無いですし。」
話を聞く限り年を重ねる毎に名工となっていた彼には当然多くの製造依頼が届くだろう。ただその納期が遅れた理由を『複数人いる妻に愛を注いでいました』とすれば腕は良くてもイメージが悪くなるだろう。
「まぁ、彼が別の道を進もうとしていた時に発生したラブコメの要員は剣道や居合の道場の娘、料理学校に通う天才少女や刀オタクな令嬢、純粋な職人気質の人が好きなボクッ子、才能に負けないでと励まし続けていた幼馴染姉妹、日本刀の事を学びに来た留学生に筋肉好きのシリアルキラー……………で、賑やかし要員として男の娘のクラスメイトですかね…………?」
「なんとも言えない感じですけど、結局結婚したんですか?」
「最終的には刀オタクの令嬢と結婚したわ。残りの少女達はその子の家の使用人として受け入れられて…………隙あらば彼を寝取ろうとしたらしいよ。」
「……………………1人だけ男が混じっている事には突っ込まないでおきます。現実でここまでラブコメ出来る人にはツッコミ所満載な感じがしますけど、ここも耐えておきますよ。」
…………………ただ、アルミナの身内にもこれと同じ様な感じでラブコメしそうな人間がいるんだよな…………という事は言わないで置こう。…………いや、コイツは遠愛中の恋人がいるが、彼氏彼女が存在しているにも関わらずラブコメが始まることも珍しくないのだ。
「とりあえず巻きこまれたくは無い事案ですね……………。」
「まぁ、その意見には同意しますよ。巻きこまれると色々と大変なのは目に見えてますよ。目の前で甘々な展開を繰り広げられたり、自分達が蚊帳の外で勝手に重要な話を決められたりとか、狙っていた子に想いを伝えられない雰囲気になったりとか………。」
「異脳バトル系じゃないだけマシだと思いますよ?あれだと最悪ヒロイン関連の騒動で何人か死にそうになってるでしょうし、何より未曾有の危機にばかり遭遇する事を考えると同情できますよ。」
まぁ、私達も似たような感じで巻きこまれたのだが…………幸いにもまともな人間達というカテゴリではあまり死んでいないのでこちらの方が少しマシなのだろうと思えてくるのだった。