漁村の宴-1
「そういえばクラーケンを倒した人物はどんな人間なんですか?その辺りが気になるのですが………。」
私が生徒会のメンバーとのチャットを終わらせて店の方に戻ると、う巻きを食べ終えたランタンがおっさんに質問していた。確かに気になってはいたのだが、鰻の方に気が行って聞けなかった事だ。
「あぁ、そういえば余所から来たんだな。たからクラーケンを倒した奴はこの街では有名な冒険者3人組………自称『ベイカーズ』…………だったか?どうだったけ?」
「産まれも育ちもこの街で全員22歳の3人組を言うならそれであってますよ。ただ、あの子達は貿易船に乗ってくる者達に夢中じゃ無いか。それぞれ人妻、屈強な男、親の手伝いをしている様な見た目の20の男が好みだから募集してないよ。」
22歳という事は転生者では無いだろう。というか、そんな性癖の集団と同郷だと思われたくない。それは転生していると判明した人間が全員25歳だったからだ。まぁ、そこまで簡単に手がかりが手に入るとは限らないし、霊の状態から転生した人間の正確な数すら分からないのだ。まぁ、これに関してはアルミナを責める訳にはいかないけどね……………。
「ただ、クラーケンを倒した時にはオップスが泣いていたらしいが……………その理由なんだったっけ?」
「それはクラーケンが子供の姿に化けていたんだよ。その子供に惚れていたから、クラーケンだと知った後に躊躇ってたけど、トドメをさしたのはオップスなのだけど。」
……………………これが絶世の美女だったり、長年寄り添った幼馴染等ならば同情できそうなのだが、どうにも同情できない。先程オップスの性癖を聞かされていた為同情する事が出来ないのだった。………………いや、クラーケンもなんでそんな容姿に化けたのかと思ってしまうのだが。
「ただ、彼等が有名になり始めたのはある旅の鍛冶屋がこの街を訪れた後だ。その時には俺もあの旅人に感銘を受けたんだよ……。実際、撫子の方はその旅人が教えてくれた事なんだ。まぁ、普通に教授してきたのでは無く、腹から開かねぇのか?という疑問だけだったんだがな。」
「………………………その話、もう少し詳しく教えていただけませんか?その人の年齢とか、姿とか…………………。」
「そうだなぁ……………あったのが10年くらい前だが、その時に年は15だからと酒を断っていたからな………。今は25だと思うぜ?ただ、あれからその旅人はこの街に訪れた事は無いんだけどな。」
これは偶然なのかはたまた本当に転生者が通った道なのか………。もしかしたら何かこの街に残しているかもしれないと思った私とアルミナは、おっさんに何か旅人が残していった物は無いかと聞いてみた。するとおっさんは自分の使っている2本の包丁を取り出した。
それを私達が『鑑定』すると………………………やはり、転生者の残していった物なのだった。まぁ、私達が転生者である事は伏せてそのまま話を聞いてみる事にしたのだった。