番外編 マシロと魔王-5
「もし………………もしもじゃ。自分の娘と再会出来たら、マシロは嬉しいか?」
「この姿になった事で拒絶されなければ嬉しいですよ。ただ、娘は私と違って健康な肉体を持っていたはずですからそう簡単には来てくれない気もしますけどね……………」
「まぁ、話を聞く限りこちらの世界では無い場所じゃからな…。」
ハシュはそう言いながら俯いていた。まだそこまで時間が経っていないが、マシロと一緒にいてその辛さに気付かなかったのだ。ハシュは長い時を生きている物の、別れを悲しめる程愛した者は存在していない。
「……………………しかし、マシロはこの世界で愛した人間はおるのかの?少なくともこの世界での親はいるはずじゃが…………。」
「残念な事に、この世界では親以外の人間と別れるまでの時間が早かったからね…………。愛する人はいないに等しくなっちゃったよ。まぁ、両親の事は愛していた…………かな?」
マシロはそう言うと、さらに悲しい顔をした。また思い出せない人間達の事を感じ取ったのだろう。その様子を見たハシュはマシロに抱きついていた。それをマシロは愛しい娘を抱擁する様な形で抱きしめた。
「……………………この世界に娘が来るとは限らん。じゃから、この私が娘の代わりにマシロが愛する者になってやる。だから愛する人がいないなんて言わないで欲しいのじゃ。」
「……………自分よりも年上の娘か……………。まぁ、ハシュも可愛いし、まだ娘で通せるかな…………。」
「マシロよ、せめて私が娘として愛せではなく恋人として、妻として愛して欲しいと思ってる事くらい察して欲しいのじゃ……。まぁ、娘には勝てんじゃろうがな………。」
ハシュはそう言いながらマシロに抱きついていた。その言葉を聞いたマシロはよしよしとハシュの頭を撫でると、抱擁する力を強めていた。そうされた事を感じたハシュは顔から湯気を出すような形で顔を赤くしてそのまま気絶してしまったのだった。
「………………ハシュ?お~い、ハシュ?やっぱり顔を赤くしてるから、アルコールが抜けてなかったのかな?ならとりあえずベッドに寝かせるとして……………その間にアレを作っておこうかな。指のサイズも知りたいし。」
マシロはそう言いながら自分自身が結婚に必要な物として考えている物を作り始めた。ただ、前世で1番思い出せないのが娘の父親……………ようするに前世の自分の夫の事だが、どうにも良い記憶が無い。というか、記憶すら曖昧だ。その為マシロは完全にオリジナルの思い出を作る事を決意したのだった。