出発前の騒動-1
夢から覚めた私が最初に見た光景は、涎を垂らしてスマホのカメラ機能をパシャパシャと使っているアルミナの姿だった。………………嫌な夢を見た原因ってこれかなぁと思いながら、私は起き上がった後にアルミナのスマホを奪おうとする。
「駄目ですよこれは!!この奇跡の寝顔を先輩にも見せなくては!!でも直で見た事を自慢したら発狂されるかもしれませんねぇ……………へっへ………。」
「どうでも良いのでスマホを渡してください。色々と面倒事になりそうだから嫌なんですよ………。ほら、生クリームどら焼きがありますよ~。それを渡せば食べられますよ~。」
「その手には乗りませんよ!!なんせ猫耳を付けた長髪剣城ちゃんの寝顔なんて先輩にお見せしなくては勿体ないのですよ!!という訳で送信ーーー。」
「やめやがれやぁぁぁぁぁ!!!」
学園長にそれを送られたら色々と面倒な事になりそうなんだよな………………。まぁ、物理的な事にはならないから良いのだけど。実際学園長のいる町から私達のいる場所は途轍もないほど離れているのだから。
結局手遅れになった事を嘆いていると、生徒会のグループチャットでコメントが付いた。どうせ学園長なのだろうと思っていると、1番始めにコメントしていたのはクラリスだった。なんでも長髪猫耳の寝顔は反則らしい。………………既に織村との関係というか私が織村に何の感情も無いという事は分かっているはずなのだが、未だに私が織村を籠絡しようとしていると勘違いしているらしい。
「……………………。まぁ、ちゃんと否定のコメントはしておこう。……いや、もう謝罪が届くのか分からないけどさ。」
「そうですね。まぁ、謝罪するのは私ではありませんし、原因は先輩ですからね。私には何の罪も無いですよ!!」
いや、罪はあるからな…………と思いつつ私は学園長のコメントで埋められ続けるコメント欄にクラリスへの謝罪メッセージを置くのだった。……………………ただ、この猫耳は取り外せるんだろうな…………と思い耳に手を伸ばすと、まるで髪に溶け込んだような感触があった。
「………………よくよく触るとカチューシャという概念を越えているけど、これについて説明してくれないかな?アルミナ…………。少なくともさっき私に着けていた猫耳はただのカチューシャでは無いだろう?」
「よく気がつきましたね!!あれはカチューシャをしてから数分放置し続けると猫耳ヘアーとして定着するのです!!まさに剣城ちゃん可愛い計画の第いっぼふぅ!!な、何でいきなり腹パンするんですか!!」
「人が寝てる間に勝手に髪をいじくる奴が罰を受けるのも当然だと思うけどな…………………。今回は腹パンで許すけど、次回からは過激にやるから。」
私はアルミナにそう言った後、猫耳の形となった髪を解そうとするも、変な弾力を持つせいで戻らないという嫌がらせに数分間抗うのだった。結局諦めざるを得なかったのだけどね………。