ヘアスタイルはシンプルに-3
「…………………………やっぱり浴衣だとツインテールの方が似合うのか……………いや、ポニーテールというのも…………剣城ちゃんはどう思います?」
「いや、私は他人に髪を結ばれるのは嫌なんだが…………。というか、髪を縛られるのはやめてくれないか?今の私には絶対に似合わない。似合っていたのは5才までだ。」
あの頃までは母さんが笑顔になる事が多かった為、色々な髪型に挑戦した物だ。しかし男になってからは髪を短くしていた為、特にいじる事をしていなかった事、表情が段々と暗くなるのを感じたので自粛するくらい似合わなくなったのは理解しているのだ。
「でもそのしかめっ面なのをやめれば似合うと思いますけどね………………でも五歳の頃の剣城ちゃんも中々…………。学園長になった彼女は美味しい思いをしていましたね………羨ましいです。」
「そういえば学園長もアルミナの先輩という事になる訳か………。」
先程生徒会のグループチャットを覗いたアルミナは少し悶えながら瞳を輝かせていた。まぁ、その時に学園長らしき人間に色々と撮られた記憶はある。多分、私が無知だったからこそあんな写真が撮れていたのだろうと思いながらいじられた髪を元に戻した。
「そういえば剣城ちゃんって胸が無いですよね……………。」
「確かに無いが、それが何か問題でも?」
髪を元に戻したのが余程ショックだったのか、アルミナは話題を変えてきた。……………まぁ、アルミナは胸があるし、それに私が嫉妬しなかった事等が気になったのだろうか?そう思いながら聞いてみると、実にどうでもいい理由でそう聞かれていたのである。
「いや、普通男装する美少女は巨乳だったり…………胸が大きい少女に嫉妬して胸を揉みしだくイメージがあったんですが………剣城ちゃんの様に、絶壁で『貧乳はステータスだ』と自信を持っているなんて稀ですよ、稀。」
「…………………………いや、胸なんて別に無くても生きていけるでしょう?それに私は結婚するつもりも無ければ子供を産みたいという願望もありません。なので胸が絶壁でも気になりませんよ。」
するとアルミナは血涙を流し始めていた。……………なんでも、私に隠れ巨乳だとか、巨乳を羨んで揉みしだくとか、どうにもならない事を悲しんで目をウルウルとさせる事を期待していたのだろう。
「…………………………アルミナ、そんな子が主人公なのは基本的に漫画の中だけだ。それに、漫画だからこそ良いキャラであって現実にいたら色々と面倒な人種だと思うよ。」
私がそう言うと、またも呆然とした表情になり動かなくなってしまったアルミナなのであった。ただ、今度は本当に動かなくなってしまったので私はアルミナの自室らしき部屋にアルミナを運ぶのだった。