賢者との対面-1
あのやり取りから暫くして、ラピの言う賢者の家に辿り着いた。まぁ、見た目からしておかしい所はある。『ラビネア』辺りで見た建築とは掛け離れている…………というか、完全に前にいた世界と同じ様な建築物だったのである。
「……………………もしかして転生者が他にもいたのか?いや、だとしてもラピを倒せる実力がほんの数ヶ月で手に入れられる訳が無いよな…………。いや、でもなんか嫌な予感がするから自称神にでも聞いてみるか。」
「自称神って誰の事なのかは分かりませんけど、とりあえず賢者様のご迷惑にならないようお願いしますね?下手すると私が怒られますから。」
「分かってるよ。まぁ、ランタンは…………大丈夫かな?」
「仮面をかぶらなければ何の問題もありません………。」
そんなやり取りの中ラピが扉を開けようとして……………吹っ飛んだ。まぁ、扉にそんな細工がされていた訳では無く、中にいた賢者が勢いよく扉を開け、ラピが吹っ飛ぶという図だったのだが。
「さてと、今日もはりきって採取……………って、え?嘘。でもこんな所で再会できるなんて……………いや、でも今の姿じゃあ私は別の姿だし、何よりもう覚えていないんじゃあ……………。」
「あ、あの~。」
「はぅっ!!ちょっ、ちょっと待ってね。心の準備が…………。この子って黒華鉄先輩の息子さんですよね…………いや、あの隕石が落ちた後に変に肉付いてるなぁと思いながら25年、ようやく前の世界の人と会えましたよ……………。」
…………………………ちょっと何言ってるのか分からないと思いながら、賢者であろう女性の容姿を見る。長い金髪をストレートにし、賢者らしいローブの下に、ワンピース型の制服というなんとも言えない服を着ており、革製のブーツを履いているのだった。
「………………………とりあえず自己紹介しておかなければなりませんよね……………。私は今世はアルミナ、前世は織村 華恋です。まぁ、織村と言っても先代当主の妹が産んだというなんとも微妙な立場でありながら、数年前に病死した者です。黒華鉄先輩には色々と良くして貰い、正直黒華鉄家にメイドとして奉公しようとも思ってました。」
「そ、そうですか………………………。」
この会話を聞いて、失礼な話だがこの人が黒華鉄家にメイドとして奉公に来ていたら色々と面倒な事に成り、私も尻ぬぐいの為にあの糞共と道連れにされてしまっていた可能性も出てくると思うとありがたいと感じてしまうのだった。
あの糞親父や糞女の事だ。彼女をこき使って織村家に目を付けられほどよい形で吸収されただろう。それも、かなり酷い待遇で……………と思いながら、私も自己紹介をするのだった。