クラリスと従者-2
「…………………すみませんでした………………。でも、お嬢様の専属メイドとして恥ずかしい限りです。男である黒木 一夜に負けている事が1番の恥だと思いますが……………。」
「いや、黒木 一夜は元々一般人だったにも関わらず3年で帝高校の生徒と供に出席できる権利を得られる技量を手に入れており、あの伝説の執事と呼ばれた方直々に鍛えて貰っていましたからね………………。かなわない事は恥では無いです。」
フェーリアはペトラを宥めていますが、ペトラは相変わらず落ち込んでいます。その様子を見て宮永さんは2人にこう言いました。正直に言って、2人が天井裏に潜んでいた事は知っていたと。
「いや、分かりますよ。物音がちょくちょくしたり、不自然な猫の鳴き声がしたりすれば。それに私は『看破』スキルを持っていますから『隠密』系のスキルは無効化出来ますけどね。その代わり『鑑定』の制度が落ちるんですが…………。」
「高いメリットには少々のデメリットが来るのは当たり前なんですね。………天井裏に潜むのはお嬢様の様子を覗く事が出来る代わりに狭い中この堅物な執事とギュウギュウ詰めになるデメリットがある訳で……………」
「だ、誰が堅物執事ですか!!私は普通レベルです!!貴方が自由奔放過ぎるからそう感じるだけです!!全く、なんでこんなのがお嬢様の専属メイドに………………。」
「私は家事が完璧にできるからね!!少なくとも紅茶と緑茶しか作れない貴方はメイドに向いてなかったからね?でもそれ以外は完璧だから専属の執事になったんじゃない。」
2人がそう言い合っているのを見て、私はクスリと笑ってしまいました。……………宮永さんは呆れた顔のままですけどね……。
「……………………まぁ、ペトラの料理は美味しいですけど、これは幼少の頃から鍛えられていた環境の違いからですよね?」
「…………まさにそれが滲み出ていますよ……………。私は厳しい祖父の元でひたすら執事として必要な作法を学んでいました。それに比べてペトラは元メイド長兼料理副長だった優しい祖母の元で料理について叩き込まれていましたからね…………。」
「でもお婆ちゃんにはかないませんよ……………。私には満漢全席や極上卵焼きは作れませんでしたから。後者の方はお婆ちゃんにしか作れない味なので諦めてますが、同じランクまでは行きたいんですよ。……………極稀に星2つ貰えるレベルですけど。」
「………………2人とも、双子なのにどうしてそんなに違うかなぁ…………?似てるのは髪の色だけってのがおかしいような気もしますよ…。」
…………………………それは私も同意ですと思いながら、私は2人に話し掛けて言い合いを辞めさせるのでした。……………そうしないと段々と声が大きくなってしまいますしね。