織村隆一郎と物欲センサー-1
あれから黒華鉄関連の事について話し合っていると、知り合いとの話が終わったのか、黒華鉄がチャットに戻ってきた。知り合いというのは俺達を転生させた神(仮)の上司に当たる者らしく、信憑性は高い話なので安心して聞くことができるのであった。
『あの隕石には数年経ったとしても転生を可能にする力を持っていたらしい。ただ、条件が向こうの世界の時間経過でかなり狭まったという訳。簡単に言えば隕石の落ちた直後はガチャの要素のあるアプリの入ったスマホを起動させるだけで転移出来たけど、今となってはサーチしてからダンジョンに入ってボス戦まで行かないといけないようになってるらしい。』
「それなら納得がいくな……………………。帝高校跡地で作業するときには仕事用のタブレットくらいしか使わないからな………。もっとも、正常に作動するかも分からないし。」
狩綱が納得しているのを見た後、黒華鉄の書き込みの続きを見る。すると、転移者にもハンディが無いようにする為なのかは分からないが『ガチャ』能力がスマホにアプリが入っていなかったとしても手に入れられるらしい。
「……………………そういえばスマホはポケットの中に入っとったけど確認するの忘れ取ったな……………。いや、パラシュート無しのスカイダイビングの時にポケットからスポッと落ちなかったのが逆に疑問になるんやけどな………………。」
「そういえば入ってましたね………………。友人に勧められて始めたけどハート送るだけで放置されてる物が……。」
そう言ってポケットからスマホを取り出した緑と美暮はそのまま電源をつけた。緑はスマホカバーはイメージ通り白を基調にして緑色の『發』の字が書かれている麻雀牌のようなデザインだった。美暮のスマホカバーはシンプルな黒一色のデザインだったけどな。
「………………………………確かスマホは鞄の中に入れていた筈なんだが…………なんでポケットの中に入っているんだろうな?」
「それについては何も言わない方が良いと思うぞ、狩綱………。俺達だって似たような体験をしているからな………………。下手すると学生寮に置いてきた筈の奴もポケットの中に入ってた話もある。」
「……………それ、お前の事じゃないよな?」
狩綱がそう言うとどこかで誰かがくしゃみをする音が聞こえた。…………………まぁ、シャワーの水の温度を調節しようとしたが、操作を間違えて魔石を急降下させて頭を強打した経歴のある男がしたのだろうが、俺はそれを黙っておく事にした。隠す必要はあまりないのだけどね。