黒華鉄家と美華家の関係-1
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着の身着のままでセバスの運転する車で元実家へと向かう時に私が持ったのはスマホと通帳と印鑑、それとデスクトップのパソコンである。幸いセバスは四人乗りの車で来ていたのでデスクトップパソコンも普通に運べるのだった。そして、二時間ほどたった頃、元実家へと到着したのだった。
「………………元は自分が住んでた家なのに、懐かしさも何にもねぇな…………。まぁ、あの時は次期当主にするためとかで男装させられたりだとか味の分からん食い物ばかり食わされた記憶しかねぇからな…………。まぁ、母さんのレシピノート全部持って行ったから料理人とかは糞親父に文句言われまくって苦労しただろうけどなぁっはっはっはっ……。やっべ、想像したら笑い止まんねぇ………。実際どうだった?セバス?」
数年ぶりに見た元黒華鉄家、現在は美華家の物である屋敷を見て私は笑い出してしまう。あの中で暮らしていた中でまともな思い出は、病気で早くに亡くなってしまった母さんと、母さんの作る料理だったと思える程、嫌な記憶しか無いのだからこんなに醜い笑い方をしても良いだろう?ともアイコンタクトを取りながら、私はセバスに同意を得ようとする。
「……………………まぁ、旦那様の怒号が続きましたよ。それはもう、真城様の料理を再現出来ない事にだけ怒鳴り散らすという程であり……………。」
「まぁ、レシピノートすら無いなら再現は不可能だろうね……。あの糞親父の味覚はそこまで多感性の良い物じゃ無いから材料や味を完璧に答えることは不可能だし、私が母さんの手順を見て計算した私のノートが無いと微妙に違う味にしかならないよ。」
そう話してみるとセバスも笑っていた。豪邸の前で笑う黒ジャージと燕尾服の二人組はさぞかし怪しい人間だと思われるだろう。もっとも、私もセバスは足音がした瞬間に真顔に戻ったのだけどね………。もちろん、
「久しぶりだな……………つるぶっふぁ!!何をするんだ剣城!!親子の再会の間で、なんで殴る必要があった!?」
「何って……………娘からの怒りの鉄槌ですよ、糞親父!!」
「待て待て、私がいつ怒りを覚えられる様な行いをした!?」
あ、この糞親父は自覚無いな。そうであれば話は早い。私はセバスに頼んで糞親父を拘束して貰う。そして、◯◯の分!!的な感じで殴りつけながら、罪を自覚して貰おう。
「最初は……………母さんが闘病している間に仕事と称して平気で不倫していた分!!」
「ごはっ!!」
「これは母さんと結婚してからすぐにあの糞女と不倫し始めた分!!」
「げふっ!!ちょっと待て、なぜ顎にエルボーを………。」
いや、か弱い乙女の私の力じゃ普通に殴っても大したダメージにならないので、よりダメージを与えられるように工夫した感じだ。…………まぁ、糞親父の顎もそこそこ鍛えてある分頑丈なので私の肘もそれなりにダメージを受けているけどね。
「これは死んだ母さんの遺骨をあの女がゴミ捨て場に持って行ったのを黙ってみていて、その後に酒の肴にして笑っていた分!!」
「ぐふっ!!そ、そんな事あった……ぐはっ!!」
「都合の悪いことは忘れるのか?糞親父………………セバス、ちょっと糞親父の肩を外してやってくれ。できれば両方の肩を。」
ちなみに、遺骨は私の他、母さんと仲の良かったメイドさんが無事に奪取して事なきを得た。今、母さんの遺骨は無事に墓に入っていますが、糞親父がそれで笑っているのを見て私はコイツをお父様と呼ぶのを止めたのだ。
「そしてこれは、家を乗っ取る為に自分の子である私すら追い出した分!!」
「なはっ!!そ、それについては悪かった………許してくれ。」
まぁ、正直言ってその辺にはあまり怒りを覚えていない。…………まぁ、政略結婚も男装も嫌だった私が当時思ったのは、追い出すならせめて母さんが生き残ってる時に追い出せよって思ったぐらいだけどね…………………。
「そしてこれは私の初のウルトラレア+がお前の命令を実行したせいでただのGになってしまった分だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「げぼふっ!!つ、剣城………、自分の父親の股間を蹴り抜くとはどんな外道だ!!」
どう考えてもおまえの方が外道だと思うのだが…………と思いながら、この騒ぎで近づいてきた足音に嫌な顔をするのだった。