織村隆一郎と照島聡美-1
照島姉とシシフィートが店の前で言い争っていると、『ラクタガ鍛冶店』から出て来た年配の男が2人に声をかける。まぁ、ナンパをする訳では無いだろうと思いながら俺は彼を観察する。
「……………………………こんな所で何やっているんだ?ポンツーン・レワト・ヨウシェーコ・イレブク・ズダラ・カバホア・イレドーソラクタガ・ガレン・シシフィート殿。」
「あら、シガー郷ではありませんか。聞いてくださいませ、あそこにいる聡という男をこの女が『ラクタガ鍛冶店』に譲ってくれないのですよ。」
「…………………成る程なぁ。しかし、諦めるつもりは無いのだろう?ならば、一騎打ちをすれば良いでは無いか。(略)シシフィート殿、そうすれば彼も潔く『ラクタガ鍛冶店』で働き始めるだろう。」
この男はシガー郷というらしいが、騎士らしさはあまり感じられない。しかし、彼の提案は2人の的を射ていた為かすぐに決闘が始まりそうになった。…………………しかし、大通りに面している場所の為、移動することになったがな………………。
「最初に言っておきますけど、私は狩猟8級ですのよ!!新参者の貴方には手の届かない実力ですの!!だから、おとなしく聡を渡しなさい!!」
「……………………………まぁ、楽しむことは出来ますかね………。丁度刀の試し斬りもしたかった事ですし。ルールとしては、相手の武器を破壊した時点で勝利でよろしいでしょう。」
………………………………ちなみに、殺すのは駄目らしい。まぁ、殺したらお互い人殺しという汚名を背負うのだろうからなぁ………………かと言って模造刀みたいに怪我をさせないようにした武器は使わないらしいのだけど。
「しかし、(略)シシフィート殿には面倒事を起こす才能があるらしいな………………そのせいで我らがどれだけ後ろめたい目で見られているかも知らないのだろう。もっとも、殆どの客はその視線に気付く事は無いのだがな……………。」
「なら、なんでシガー郷はあの店を利用し続けているんだ?」
「……………………私の体質が原因なのだよ。情けない武器ほど強くなれるという体質であり、木の枝だけでまぐれではあるが狩猟3級の魔物を倒せた事があると言えば分かる位の物だ。その木の枝よりも強くなれたのだよ。」
つまり、真っ当な職人である店主の武器ではシガー郷の力を思う存分に発揮できないらしい。…………………………いや、どれだけ後ろめたい事を秘めているんだよ『ラクタガ鍛冶店』はと突っ込みたくなったのは別の話なのだが。