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織村隆一郎と鍛冶屋の事情-3

それから暫く話し込んでいると、『ブラックスミス』の扉が開いた。普通に考えればここに来るのは客の為、照島が対応する為に入り口に向かった。……………………すると扉から入ってきた人は照島の腕をガチリと握り、そのまま引きずり出そうと引っ張っていた。


……………………だが、照島の力が強いのか引っ張っている奴の力が弱いのか、照島の体はビクともしなかった。それでも諦めがつかないのだろうか……………、そのまま無理に引っ張り続けた結果腕から手が離れるような形で転ぶのだった。


「………………………………客かと思えば『ラクタガ鍛冶店』の娘じゃないか。お向かいだからと言って無理矢理従業員に加えるのは非常識だと思うのですが。」

「五月蠅い五月蠅い!!いいからアンタはこっち側に来れば良いのよ!!こんな寂れた鍛冶店よりもこちらの方が稼げるのよ?なんでこんなに不満なのよ!!『ブラックスミス』には客が2人しかいないけど、今の『ラクタガ鍛冶店』には客が70人は入ってるわ!!仕事出来ない事は無いから確実にレベルアップ出来るわよ!!」


…………………………いや、それ全部建前であって本当の目的は『ブラックスミス』の従業員減らしたい事と、鍛冶出来る人間を荷馬車の様に働かせたいだけだろ…………と感じてしまう。恐らくその考えは間違っていないだろう。


「昨日も言いましたよね?僕はそちら側にはいけません。仕事のペースが速すぎると自分の作ろうと思っている武器が作れませんし、そちらで学べそうな事はここで学べることの10分の1にもならないですし……………。」

「またその言い訳?言っておくけど、私のお父様が経営している『ラクタガ鍛冶店』はこの町の中で最もシェアされている店なんですよ?こんな廃れた場所で学べる事よりも遙かに有意義な事を学べますよ!!」


店主から話を聞いた事だけで判断してみると、鑑定結果を偽装する事に対する罪悪感と、低クォリティの武器を量産する事ばかり考えて作り、使い潰されるのを黙って見ている事への憔悴感……………………激務により寝不足になる疲労感を学べるのだろう。まぁ、『ラクタガ鍛冶店』に入ったことは無いので真偽は分からないが……………。


「確かに最初はそちらの方に行ってみたのも事実ではありますが……………商品のステータスは偽装されているだけであまり良い物では無かったですし、利害が一致しませんでしたから…………。」


多分利害の一致にならなかったのは、自由に武器を作ったり研究したりする事をさせなかった事が一番の原因だと思う。照島は照島姉の為に刀を作ろうとしているので、低質な剣のみを作らされ続ける環境で働く事は無理だと判断したのだろう。


それを聞いた娘はぐぬぬと表情を歪ませた。それは経営している父を責めるのではなく、その経営について来れない照島に向けているのだろうと感じた。…………………だが、それで諦めるわけでは無く、今度は『ブラックスミス』を非難する言葉を、ややヒステリックに叫ぶのだった。

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