織村隆一郎と刀-2
「武器が大分痛んでしまったのでメンテナンスをお願いします」
照島姉が『ブラックスミス』に入って最初に言った言葉はそれだった。そして、手には5本ほどのボロボロになった剣があった。ただ、ボロボロな見た目にしては今にも折れそうという印象は無いため、使い方を間違えていたのでは無く使いすぎて出来た傷なのだろうと感じたのだった。
「………………………お主、どれだけ使えばここまでボロボロになるんじゃ?全部折れる直前ではないか。まぁ、折れる前に持ってきているだけマシじゃがの。」
「……………………………そうですね。正直言って、昇格試験で闘ったモンスターが硬すぎたので折れそうになりました。なんとか合格はしましたけどね…………………。」
つまり、照島姉は狩猟7級に上がったのだ。……………恐らく、俺達転生者の中で最も狩猟のギルドランクの高い人間になっただろう。………………最強と言わないのは黒木や黒華鉄が存在するからであるからだ。
「あぁ、7級への昇格する為に倒すモンスターは『カチカチ亀』じゃったかの…………………。それに勝てたならばこの事について特に咎める事は無いのぉ………。それに、こちらにとってもある意味好都合じゃったわけじゃし。」
そう言ってから店主はある物を店の奥から取り出した。その武器には鍔が着いていなかったが、それ以外の部分は刀だった。鍔が無いために鞘に入れるとかなり不格好になるが刀自体は完成していたのであった。
「鍔?っちゅーもんはとりあえずここにある。取り外し可能な物でなぁ…………………。鍔によって補助される能力が違うからじっくり選んでいくと良い。」
「…………………………分かりました。……………聡、油や打ち粉の研究は終わったでしょうか?」
「油に関してはまだ十分では無いですが、打ち粉の方は出来ましたよ。その関係で暫く寝ていないですけどね………………ポーション作る間にやってましたし。」
照島姉によって呼び出された照島にはひどい隈が出来ていた。どうやら寝不足なのは本当の事らしい。しかし、打ち粉が出来たという事は、手入れ用の油さえ手に入れればメンテナンスも可能になる…………という事なので、照島に研究を急がせていたのだろう。
「………………………………そういえば、他の奴等は刀とか当てていないんだろうか……………?いや、当たっていたら武器として使っているよな………………。」
「私はガチャを持っていないので分かりませんが、武器ってそこまで出にくいのですか?」
「………………………それは俺のパンツを犠牲にして引いたガチャでトイレットペーパーが出て来た事から明らかだろ………。」
少しだけトラウマを思い出してしまった俺は、用事は終わったのにも関わらず『ブラックスミス』でorzの体形になってしまうのだった。