織村隆一郎と平行な夢-4
その後、夢の中の世界の時間はまたしても飛んだ。場所は…………クラリスの家だった。そこにはベッドで寝ているクラリスとクラリスに扮した黒華鉄…………そしてクラリスの執事であるフェーリアと俺がいた。
「この方とこの方とは親しくしてください。ですが、この方とこの方は良い噂を聞きませんから、そこそこの付き合いでお願いします…………。後、隆一郎以外の方にセクハラされそうになったら適当にあしらってください。」
クラリスは既に黒華鉄が代わりにパーティーに出席する事を了承しているのか、人間関係についての情報を黒華鉄に渡していた。……………黒華鉄はその人物の写真を確認してからメモ用紙を仕舞った。そして、準備の最終段階に入っていた。
「分かりました。では、ハイヒールもお借りしますね。フェーリア、準備を。」
「はっ。………………って、お嬢様でないのについ反応してしまいます…………。まぁ、今回はお嬢様の代わりとしてパーティーに参加されるので命令は聞きますけどね。ただ、お嬢様のハイヒールは流石に貸すことが出来ないので私の物を貸しましょう。」
「まぁ、元からそのつもりですから。しかし、声くらい判別できなければ使用人失格だと思いますが…………。私の執事であったセバスはこの位ならば軽々と判別していましたが………。」
…………………黒華鉄家時代の使用人達は優秀な者ばかりが集まっていた。その執事長を任されていたようなセバスという者はフェーリアと比べれば圧倒的に劣るのは当然かもしれない。フェーリアも十分優秀なのだが…………。
「流石に声が似てるんじゃ無くて同じという物を判別するのは無理ですよ………………。そもそもどこでそんな芸当を覚えてきたんですか……………。」
「…………………男の振りをして生きる時に色々と訓練させられたんだよ。声も男っぽくないといけないから声のトーンを変える為に特訓したんだよ。流石に6歳児の女子に男らしい声なんて出せないだろ?子供だから騙せるかもしれないが…………。」
…………………つまり、黒華鉄は男らしい声を出すために声域を広げる訓練を続けた結果、ついでに女性の声ならば声を完璧に真似出来る様になったと……………。まぁ、理にはかなっているが………と思うのだった。
「…………………とゆーかこれ、実の親でも判別できないのでは………?」
「まぁ、私がこのパーティーに出るのはこの家の乗っ取りじゃなくてこれから生徒会が出席するパーティーに出なくても良いという条件が目的なのですから、気にする必要ありませんよ。」
……………………まぁ、乗っ取りを体験している黒華鉄が言うのだから間違いを起こすことは無いだろうと思いながら夢の中の俺はクラリスの頭を撫でているのだった。