織村隆一郎と平行な夢-1
…………………………これは、明らかに夢の中である事は分かっていた。少なくとも、異世界に転生したという事が帝学園の生徒会室の中で居眠りしていた僅か数分の間に見た夢であるとは到底思えなかったからだ。
「…………………織村、お前………………なんで黒華鉄を生徒会に入れようと思ったんだ?という事を聞いてる最中だったよな?なんで話す側のお前が先に寝てんだよ…………?まぁ、建前としては十分な理由を言っていたがな…………。」
「…………………まぁ、はっきり言えば黒華鉄家を復興させても良いんじゃないか?とも思ったんだよ…………。美華家を乗っ取った使用人は俺の家の手が入っている者だからな…………。俺が美華家が手に余ると言ったら両親の方が積極的に動いていたんだよな……。」
その理由を俺は、黒華鉄の成した財や信頼を僅か1年で崩壊させた挙げ句、黒華鉄家の所有する資源を無駄遣いする事に腹が立っていたのだろうと考察している。………………そんな夢の中の俺の思考が頭の中に流れていく。…………どうやらこの平行世界らしき夢の中では色々な要素が違っているらしい。
ここまでの会話で分かっていることは、美華家の断絶?の理由が美華 結城が狼に殺されたのではなく、俺の両親が使用人として美華家に雇わせた家の者を使って美華家を乗っ取ったという事になっているらしい。
…………………まぁ、美華 結城という人間は生徒会長として見れば能力が彼の自己評価に追いついていないという物だった。もしかしたら黒華鉄家が存在し、まだ一般人だった頃に苦労し続けたならば話は分かるのだが………………そんなエピソードは誰も聞いたことが無いらしい。
「……………………あの黒華鉄を見ろ。既に一般人として生きる気満々だったというか、黒華鉄家の再興なんて求めていなかったじゃねーか。まぁ、それが美華を付け上がらせたんだと思うけどな。」
「……………………そうだな。まぁ、美華の奴は黒華鉄家当主の妾の子時代にも贅沢し続けていたと言われていたから同情もできねぇしな。しかし人望だけであれだけの使用人達を雇う事の出来ていた物を捨てるなんて、欲を出しすぎたんだな……………。」
段々と話が脱線していたが、この夢の中の俺と黒木は2人で話し合っていた。……………………いや、待て。クラリスと蔵鮫、宮永は何処に行った?後、生徒会に加入したであろう黒華鉄も見当たらない………と、現実では黒木と2人きりで話す事など無かったなと思いながら、俺は夢の続きをみるのだった。