織村隆一郎と台所-2
「…………………………………肉は美味しいけど物足りないのが問題ですかね……………………。まぁ、塩も胡椒も酒も使ってないから仕方ないとは思いますけど……………。」
「そうだな…………………。ただ胡椒は人気商品なのか1日の収穫量が少ないのか昼には売り切れているらしいですからね…………。塩に関しては扱っている店が定休日でしたし。」
これが試作した兎肉ステーキの感想だ。………………まぁ、下処理のおかげで筋っぽいのはどうにか出来ているが、塩や胡椒といった調味料が無いため、今回は失敗という事になるのだろう。
「……………………………仕方が無い。これを今日の夕食にするわけにはいかないからな…………………。確か黒華鉄が送ってきた食料にはこんな奴も………………っと、あったあった。」
「それは…………………………ピザですか?グリルヒーターでなら十分温まるでしょうけど………………。」
「………………出来れば石窯で焼きたいですけどね…………。まぁ、普通に食べられれば問題ないですよ。あ、あそこの食器棚から皿を出しておきますね…………………。」
御子柴が皿を取り出しに食器棚に向かう。食器棚は中が見えるようにガラスを使っており、取っ手は『蜜金石』でコーティングしたかのような金色なのであった。まぁ、全て金色というデザインで無くて良かったのだけど。
「それじゃあグリルヒーターでピザを焼くとするか…………なぜかこのグリルヒーターはラージサイズのピザさえも入る位の幅があるからできるんだけどな。」
「まぁ、異世界基準ですし……………………それに電子レンジやオーブントースターが見当たらない事を考えるとこの位しないといけないのでしょう。」
もしくは、ここの家具を作った家具職人ビーバの好みなのだろう…………………そう思いながら俺はピザの入った箱を何個か取り出した。箱に書かれた文字に何かしらの意味がありそうだと思いながら。
「……………………………『狼肉乗せたマルゲリータ』、『狼肉とキノコのピザ』、『狼肉と三種のチーズのピザ』の内どれが食べたい?さっきステーキ食べた分を考えると二切れまでが限界だと思うのだが…………。」
「「じゃあ、『狼肉と三種のチーズピザ』で。」」
御子柴と群雲が即答したので俺は『狼肉と三種のチーズピザ』をグリルの中に入れる。冷凍されていたのかは分からないが、垂れる事無くグリルヒーターの中に入っていくピザを見ながら、グリルヒーターのスイッチを押すのだった。