織村隆一郎と台所-1
その後、群雲から「副会長には内緒にしますから」とその初恋やらの話や実際どう思っているんですかと茶かされたり、御子柴もそれに便乗してきたりして最初の目的を忘れかけたのだった。
「……………………色々と話が脱線したが、この肉をどうするかを考えるぞ…………………。俺としてはこの肉は早々に処理した方が良い。」
「ですが、アイテムBOXの中では食品は腐りにくいと…………。まぁ、生肉で氷などで冷やされていませんからね……………。肉の処理は完璧なので腐りやすくなっているという事もありませんけど。」
それはそうなんだが、流石にアイテムBOXを信用しすぎてもいけないだろう。信じ切ってそのまま腐らせてしまったら元も子もないのだから。……………………ただ、『鑑定』すると殆どが兎か狼の肉なんだよな…………と感じる。
「とりあえず普通に丸焼きにしてみましょうか。とりあえず台所に向かいましょう。この規模の家なら調理場と言える程の大きさは無さそうですから。」
「まぁ、流石に高級な設備が必要な料理を俺達が作れる訳が無いからな……………。完全に宝の持ち腐れになりそうだ。…………………正直な話、家庭科の教師が1組に関わっていない事が悔やまれるな…………………。」
だが、いない人の事を考えても仕方が無い。そう思いながら俺達は台所の方へ向かう。その前にリビングのテーブルの上に『竜骨鋼の長剣』や『マジックナイフ』などのクエストに行った時に持っていた物を置いておくのだった。
「この家のインテリアはなんというか………………品が良いですね。たまに金で金具がさび付かないようにコーティングされていますし。この家具をスキル無しで作れるなら織村家の当主も注文しますよね……………。」
「いや、スキル以前に素材が無いだろ……………。特に金とかモンスターの素材とか。」
そんな事を話ながら俺達は台所に到着した。その台所はIHの様に魔石が埋め込まれた物とガスコンロの様に中心に赤い魔石がはめ込まれている物の2つが存在した。そして、その下には魔石が埋め込まれたグリルヒーターがあった。
「………………………………正直台所がここまで現代風だとは思わなかったな……………。流しも魔石だけど。」
「とりあえずフライパンがあるから肉焼いてみない?クエストの報酬で色々作ってみたんだけど。……………菜箸や木製のフライ返しみたいな木製の調理器具はあるし、油も買ってきてるからさっさとやってしまおう?」
そして、俺達は肉の調理を開始した。上手く出来たら他のメンバーも呼ぼうかと考えながらシンプルなステーキにするという事で、群雲作の包丁で肉を少々厚めに切り分けていくのだった。