織村隆一郎と新居-3
ルナントに渡された住所に来てみると、横幅は普通の一軒家の縦長な住居があった。ただ気になるのは『ビーバのアトリエ5』という外れ掛けたというか、傾いている扉がある事だ。………………まぁ、お金が用意できずに作品の詰まったアトリエを明け渡すことにしたという事なのだろう。
外観だけで判断すると、木造建築であり年期が入っているのかやや濃い茶色に変色している。しかし崩れそうな雰囲気は無い為、安心して住むことが出来るだろうと思える。ただ、窓と言えるのが木製の開き戸しか無いのは少し不便だな…………と思うのだけど。
…………………………とりあえず鍵を開けて中に入るか……………と俺は新居に入ってみるのだった。………………………そして、玄関に入った俺の目に入ってきたのは下足場だった。…………………西洋風の世界の為、靴のまま上がる物かと思っていたので意外だったが、回収し忘れたと思しきスリッパが置かれている為、靴を脱ぐのは間違い無いのだろう。
俺は中から鍵を閉めてから灯りを付ける。ここでも魔石がスイッチと灯りを担当しているらしく、ランプの明かりよりも明るい、前の世界と同じような感覚になる。ただ、間接照明でなく直接的な照明の為、眩しいのだがな………………………。
とりあえず俺は壁に寄り掛かってから帝高校チャットを開き、生徒会+黒華鉄のみのルームに入室し、新居と言う名の拠点を入手した事を伝えた。そんなやり取りをしていると、黒華鉄から『収納の革袋』というアイテムBOXが送られてきた。中身は空となっていたが、あっという間に食料品でいっぱいになってしまった。
『食料品は食べきれる気がしないから送っておく。まぁ、主に肉なんだがな。流石に2人だと食べきれない。』
……………………………まぁ、送られてきた肉の量は毎日バーベキューしても十分な量食べられる程だ。そして、この量を送ることが出来るという事は、当然黒華鉄の方にはこれ以上の食料品があるのだろうと思える。
「とりあえず御子柴と群雲を呼ぶか…………………。俺は料理できないからな……………………。流石にこの肉全部を炭に変えるわけにも行かないし、木造の家で『火魔法』なんか使ったら家事になるのは分かりきっているからな……………。」
そう思いながら俺は御子柴と群雲を新居に呼ぶのだった。そして、チャット内で道案内をして鍵を開けて2人を中にいれた。……そして2人はアイテムBOXの中にある肉を見て久々に自由に調理出来る!!と歓喜していたのであった。