織村隆一郎と新居-1
「………………………………御子柴……………大丈夫か?」
「大丈夫じゃないです…………………会長、私の頭には何も無いでしょうか?出血していたら困りますから………………」
「いや、出血はしていないな。見事なたんこぶが出来ている位だ。冷やしておけば問題ないだろうさ。」
「そうですか………………………なら良かったです。」
……………………………御子柴が頭を心配しているのは、御子柴がシャワーの温度を下げようと水色のレバーを勢いよくおろした時、シャワーの役割を果たしていた魔石が急降下したのである。その結果、御子柴は魔石の一撃を喰らってしまった為だ。
「どうやら水色のレバーはシャワーの場所の調節らしいですね……………でも、火傷にもなってなくて良かったですよ……………。これがもし熱湯だったらとたも危ないですからね……………。」
「そ、そうだな………………。にしても、御子柴は俺とは違ってレバーの意味は知っていると思ったんだが………………。」
すると、御子柴は首を横に振った。確かに銭湯の方には行ったらしいが、そこは前の世界と同じようなシャワーとカランという構造だったらしい。……………………ギルドの方では銭湯に出来るような程の大きな水道が引けていない為、魔石でどうにかしているらしい。
「………………………それよりも会長は新居はどうするつもりなのでしょうか………………?今日は買い取りをするには遅い時間ですから宿を取るにしても、家は必要だと思いますよ?」
「………………………まぁ、そうだな……………。安い宿を借り続ける位の稼ぎは出来るだろうが、持ち家の方が何かと都合が良いか…………。」
「……………………会長には私達には秘密にしたい事もありそうですからね。それに、宿屋だと生産活動が出来ませんからね…………騒音や臭いが付いてしまうので。」
まぁ、今日は宿に泊まる事は決定しているな……………。アルさんの所に戻る訳にもいかないだろうし。とりあえず御子柴にオススメの宿の名前を聞いておく。すると御子柴は『孫の荘』という宿を教えてくれた。老夫婦が経営している宿で、売り出されている家や土地の情報が豊富らしい。
「………………………………それじゃあ俺は上がらせて貰う。」
「では、また明日です。会長。」
「…………………………前々から思っていたんだがもう俺は生徒会長でも織村家の跡取りでも無いんだから会長とは呼ばなくても良いんだが……………………。」
「………いえ、会長は会長ですから。というか、もう言い方変えるのは面倒なんですよ………………。会長が自然な言い方なんですからそれで良いでしょう?」
そんな会話をした後、俺は風呂場から脱衣所へ戻るのだった。