織村隆一郎と初戦闘-6
風呂はまず、横長な普通の銭湯というような物で、その横に1人か2人くらいが入る事を前提にしたような水風呂があった。ただ、横長の風呂の水風呂とは逆方向の所にはジャグジーみたいに泡が出ているという構造だった。
ただ、水風呂の隣に扉があった。その扉の向こうからは地下の作業所の様な熱気を感じるので、あの中はサウナなのだろう。…………………ただ、中肉中背の大人が3人入れるかという位の奥行きの為、とりあえずつけておいたという感じがする。
「…………………………まぁ、棚に置いてある籠の数からすればこのサイズだろうな………………。とりあえず髪から『サイレントレント』の唾液を落としておくか。」
そして、洗い場の方に向かうと、そこには前の世界とは全く異なる構造の物が置いてあった。鏡と石鹸を置くための台は前の世界の銭湯と同じなのだが、シャワーとカランがあるべき場所にはいくつかのレバーとふよふよと浮いている青い魔石しか無かったのだった。
「………………赤と水色と黄色と白の取っ手のレバー……………多分赤と水色は温度調節なんだろうな……………。で、問題は黄色と白のレバーだ。……………………どっちがシャワーでどっちがカランなんだ?」
しかし、迷っていても仕方ないため、最初に黄色のレバーを引く。すると、下の魔石から水が出て来た。どうやら、黄色はカランのレバーらしい。とりあえず魔石から出ている水に手を出して温度を確かめてみる。すると、丁度良い温度だった為、俺はそのまま黄色のレバーを元に戻してから黒のレバーを引いてシャワーを使うのだった。
「クソッ。中々ネバネバが取れない…………………。やっぱり石鹸は買っておくべきだったのか?……………………まぁ、後悔していても仕方ないか…………………。このネバネバを落としたら湯船に浸かってあがれば良いわけだし。」
それから20分くらいかけて髪を洗い、なんとかネバネバを落としきった。途中『サイレントレント』の唾液は熱に弱いのではと考えて赤のレバーを少しだけ引いたのが効いたのだろう…………。
「あぁ~。生き返るなぁ………………。」
「会長もここに来てたんですか。あ、ルナントさんからの伝言で制服は綺麗に出来たので籠に戻して置いた事と、新品のパンツを数着も餞別で置いておいたそうです。」
「そうか……………報告ありがとう、御子柴。」
「お褒めいただき光栄です、会長。…………シャワー少し暑いので、温度を下げますか…………………。」
ルナントの報告をする為に風呂場に入ってきた御子柴は、髪を洗おうとしたが、温度が高かったのか水色のレバーを引くのだった。………………今思えば、やや思いっきりレバーを引こうとした御子柴を止めていれば良かったと思いながら、俺はあの事故の目撃者になるのだった。