織村隆一郎とブラックスミス-1
ギルドに紹介された武器屋『ブラックスミス』に入ると、出迎えてきたのは小人のような老人だった。しかし、ただの小人という感じでは無く、鍛え上げられた筋肉が凝縮されたというような貫禄のある雰囲気があった。
「…………………ギルドの受付からの紹介か?なら、注文できる金は持ってるんだろうな?……………………どんな武器が良い。」
「…………今欲しいのは盾と、予備の武器だな。メイン武器はアルさんから貰っているが………………確実に壊れないという事は無いからな……………。それに盾を持っていなければ低級のモンスターの攻撃でも死にそうなんでね………………。」
俺が店主にそう言うと、店主はその武器を見せてみろと言ってきたので俺は『竜骨鋼の長剣』を見せた。すると店主は何も言わずに店の奥に行き、鞘の違うナイフを2本と手甲に縦に長い盾がついた様な物を持ってきた。
「お主、『精錬』持ちじゃろう?ならばこの武器を『精錬』すれば低級の敵は倒せるじゃろう。しばらく狩りはこれでどうにかせい。明日、素材を用意してやるから好きな素材を選びに来い。そうすれば一週間後に良い武器を完成させてみせよう。アルトマンの弟子に死なれたら困るからな。」
「分かりました。……………………にしても、この店は良い物が揃っているのに、なんで客が少ないんですかね…………?」
この『ブラックスミス』の武器は『鑑定』すれば良い物が揃っている事が分かる。………………………だが、俺以外に客はいない。一応メンテナンスする武器の預かり表があり、僅かながら客の名前が記録されているので客がいない訳では無さそうなのだが………。
「客が少ないのはここの武器が質素な作りだったり、少々価格が高かったりするからじゃろ?それに詐欺紛いの事をしている『ラクタガ鍛冶店』が向かいにあるからの……………。」
「あぁ、結構並んでた店……………。どんな所なんですか?」
「見た目重視、性能はそこそこじゃが一部に高レベルの『偽装』付き……………まぁ、それでも強い武器もあるがの。『偽装』に気づかれなければこの店よりもあちらの店が良いという訳になるのじゃよ。」
ただ、この町にはもう一つ『バッカーノン』という見た目が若い魔女のやっている鍛冶屋があり、『ブラックスミス』と同等の腕があるらしい。ただ、『バッカーノン』で買った武器のメンテナンスは『ブラックスミス』が一任しているらしい。
そんな話をしていると、店主はため息をつきながら愚痴をこぼす。まぁ、この町の事情は知っておく方が良いだろうと、俺はこの話に耳を傾けるのだった。