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プロローグ

部屋の電気は必要最低眼しかつけていない部屋の中、パソコンとスマホの画面から出る僅かな光を見つめながら、私はソーシャルゲームの『グラントムボーイズ』をプレイしていた。俗に言う無課金でも楽しめる課金要素満載の美少年ゲームですね。


「…………………ようやく義務教育も終わったことだし、これでグラボーに専念できるなぁ…………。いやぁ~、長かった長かった。あの糞女と糞親父に家を追い出されてから、これだけが生きがいになっていたなぁ~。」


義務教育が終わったという証明は昨日が中学の卒業式だった事から明らかだ。今までずっと思ってたけど無駄金と無駄な時間を使わされる為に嫌々ながら通っていたなぁ…………。その無駄金と無駄な時間は私に何を与えたかというと、『中卒』の称号は必要だったにせよ『男の様な女』とか『不幸な子』、そして『成績の無駄遣い』だった。


いやいや、全国模試は四択問題なので運が良ければ全国ベスト10に入れるでしょ?と言ってみたら「そんな運があるなら宝くじ買えよ!!もしくはスクラッチとか数字塗りとか!!」と返された。しかし全国模試でトップクラスである事実は変わらず、三年生の時は学費免除できるかもしれない高偏私立でも受験したらどうなんだ?と教師がうるさかったが、それも今日で終わりなのだ。


「………………おっ。今日の11連ガチャは虹色が大量に出てくるなぁ。これからは平日の午前10時のに一回しか引けないガチャを毎回引けるんだなぁ………。フィーバータイムガチャさいっこーだぜ!!」


そう思いながら私はパソコン内のガチャ内容の確認画面をクリックする。するとそこには、ウルトラレア+の内容がドバッと入っていた。通常バージョンのウルトラレア+が出たのは初めてだと思いながら、誰のカードが取れたのかを改めて見てみる。


先に話しておくと、グラボーはパズル系では無く、チェスとかの様にマス目のあるフィールドでキャラを動かして戦うというゲームである。まぁ、◯◯無双という様なアクションゲーム的なモードも無課金者の為の救済措置のシステムも入っているのだけどね……………。


ガチャで手に入るのは『キャラ』という文字通りフィールドで戦う美少年達と、『アーツ』という『キャラ』に技を覚えさせることが出来る使い捨てのカード。それと『ウェポン』という『キャラ』に装備させる事の出来る武器。最後に『ソノタ』という他のカードの複製やら進化、合成などに関係する雑多なカードである。その他表記で良いだろ!!と突っ込む人は少なからずいるだろうが、これが公式である。


ガチャのハズレを減らすためか、戦闘中に使う回復やステータスアップのアイテムは全てゲーム内通貨でしか入手出来ない様になっている。まぁ、課金して11連回して全部ゲーム通貨で買えるアイテムでしたなら心折れそうになるしね……。


グラボーの『キャラ』は歴史上の偉人や、童話などの登場人物、オリジナル世界の英雄やらを美少年化した物で、サービス開始から5年たった今もプレイユーザーが100万を超えている。それでもまだ、レアリティの最大であるウルトラレア+5でパーティーを揃えたユーザーはいないという程、廃課金者もやり込めていないというソーシャルゲームであるのだ。


まぁ、私はそこまで運が無いのでウルトラレア+が出ただけで昇天する気持ちになっていた。これまでは義務教育を受けている子供だった為に一ヶ月に1000円までしか課金出来なかったが、これからは一日に何万でも課金できる様になった事に歓喜しながら、ガチャの結果をパソコンの画面で確認する。


ウルトラレア+  3枚

ウルトラレア   5枚

マスターレア+5  3枚


しかし、急にパソコンの電源が切れる。いや、それだけは無く家の中の明かりやら小さな冷蔵庫などの電源も切れる。……………幸いスマホの電源まで切れる事は無かったので別の事をしていたスマホの方でグラボーを起動して確認すると…………。『通信エラーが発生した為、ガチャ結果を全て売却しました。併せて500万Gに変換されました。』という無慈悲なメッセージが出ていた。


まぁ、通信中に電源切ればエラーになるけど課金ガチャでは緩和されないの?と思ってしまう。残る物があっただけマシだとしても。別のゲームでは売却したという結果にならずに金は払ったけどガチャはやらなかったという様な表示になるらしいから、マシなのだと何回も自分に言い聞かせた。


……………にしても、パソコンから流れていたBGMが消えたのでドアをノックする音が聞こえる。別に家賃は滞納していないし、犯罪を犯した記憶も無い。光熱費やらネット代、スマホの使用料もきちんと払っている為に誰がノックしているのだろうか………と思いながら私は玄関の方へ向かう。


その途中でブレーカーを確認したが、テンパールは落ちていない為、電気が止まったのは電気の使いすぎでは無いはずとと思いながら玄関のドアを開ける。するとそこにはいかにも執事という白髪と白髭の燕尾服を着た男がいた。


「お久しぶりですな、剣城様。」

「………………なんだ、あんたかよ。セバス……………。何の用?私はもう黒華鉄くろかがね家の人間じゃないし、そもそも名前変えたじゃん。美華みはな財団って。」

「……………それなのですが、剣城様にはこれから帝大学付属へと通って貰います。これには拒否はできませんし、キャンセルすれば美華家の名が廃る事となります。もう登録されておりますので、早速寮へと引っ越しましょう。」

「嫌だね。私の城はここだ。移動する気は無い!!」

「では、一生電気の使えない城にいるのですね…………。なお、インターフォンで出て来なかったら電気を止めてからノックしろと言ったのは旦那様でございます。」


それを聞いた私は仕方なく城から移動することにした。少なくとも寮ならネットくらいは繋がっているはずだし、電気を止められた城に無理に籠もるよりはマシだろう。もちろん、あの糞親父を何発か殴らせろという事を条件につけたけどね。ウルトラレア+のカードを三枚もボッシュートされたのだからそれぐらいは許されるだろう。

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