リア充になりたい主人公。
主人公、秋山出水は、紅茶好きで読書好きなごく普通のスペックを持った茨城のなかでも、有数の大きさを誇る光圀学園の生徒である。
父は自衛官。母も自衛官という家の出身で一応、本人もなんとなく自衛隊に就職するため、この学園に入った・・・というか、入れさせられた。
「はぁ」
学園生活はそれなりにエンジョイしたいはずの出水だったが、この上ない虚無感を感じていた。
それは、時期的なものも、あるだろう。四月といえば、花が咲き乱れ、冬眠から目覚めた動物たちが、活発に動き、咲き乱れる時期であるのにも、かかわらず・・・出水には彼女がいない。
「よぉ、出水、彼女できたか?」
そういいながら、いかにもチャラそうな不良気取りの男が話しかけてくる。
「なんだ、真一か」
「なんだとは、なんだ・・・お前に、彼女の作るための条件を教えてやろうと思うたに」
そういうと、黒谷真一は、一枚の紙を手渡してきた。
「なんだこりゃ・・・」
そこにはサッカー部の部員募集が書かれていた。
「・・・どうだ?モテ」
出水はその紙を丸めて、何か続けようとしていた真一の口に突っ込む。
「くだらん。」
口に詰め込まれた部員募集の紙を、必死の形相になって、取り出した真一に向かって出水はひらひらと手を振り去っていく。
出水は、運動が嫌いだ。特に、サッカーとかを極端に嫌う。
が、確かに部活に入って、そこから接点をもつのもありかと、ふらふらと学園内をぶらつく。
この、光圀学園は部活動も盛んで、とくに武道系の部活は全国有数の強豪であるし、文科系の部活もかなり盛んに行われている。
構内をぶらぶらしていた出水だが、いつの間にか外に出ていた。
この学園は梅の名所でも知られていて、全国各地から集められた梅が年中花開くことでも有名で、入学式の時期には桜と共に梅もさいてる。
「ん?」
満開に咲く梅の下に一人の少女が立っていた。
「・・・」
じっと、梅を見つめる彼女は、昔で言うとこの学園のマドンナだろう・・清楚で、儚げで、守りたくなるようなその容姿に、しばし出水は見とれていた。
「あ・・・。」
何かに気づいたように、彼女は振り向き、出水に微笑を向けた。
(かわいい・・・)
若干、服が、迷彩服で、何か大きな長物を抱えていていようが、その長物が、ライフルであるとか関係なしに、出水はそう思った。そう、たとえ彼女になら、撃たれてもいいとさえ・・・。
「ッて、なるかぁ!!」
すんでんのところで、出水は自我を取り戻し、おろおろしている。
「伏せろ、一般生徒!!」
その言葉にはっとなり、思わずその場に、うずくまるように伏せた。
「まて!お嬢」