ノエルさん
またノエルさんのして欲しいことを間違えてしまいました。
「私言ったよね。『お菓子買ってきて』てさ。なのに何でこんなゴミ持ってきたの」
そう言って私が買ってきたクッキーを指さしました。あれ、二ヶ月前に美味しそうに召し上がっていただいたものと同じはずなのに、ノエルさんはとても苛立っています。
「ごめんないノエルさん。買い直してきます」
何を買ってくればいいのか聞くわけにはいきません。以前それをして
『私が何を欲しいのかも分からないの』と怒られてしまったからです。
「ごめんじゃないよね。どうしてあんたはそんなこともできない屑なの」
『ノエルさんが何を欲しいのか言って下さらないからです』とは言えません。ノエルさんの気分を害してしまいます。
「……ごめんないノエルさん」
「ねぇあんたってさ、ほんとに謝ることしかできない能無しの屑よね」
「はい」
「なにそっけなく『はい』で済ませてんの!違うでしょ!」
「ごめんないノエルさん。ただ一人屑の私の面倒をみて下さるノエルさんに、ろくに報いることができなくてごめんなさい。でも私はノエルさんがいなければ生きていられません。どうか私を見捨てないでください」
「もういいや。謝られても縋られても何にも面白くないから死になさいよ」
また死ねと言われてしまいました。もう何度言われたか数え切れません。あ、まずい、またあの妄想をしてしまう。
『死んでくださいノエルさん。もう私はだめになってしまいました。ごめんなさい』
私は少しもだめになっていません。まだまだノエルさんのために頑張れます。いえ、やはりこんなことを何度も考えてしまうなんて私はだめになっているのかもしれません。でも私がノエルさんを殺すなんて、そんなことはありえません。だって、
「私はノエルさんが大好きです」